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エレベーター 第二部(7)

エレベーター 第二部(7)



久しぶりの両親との食事は楽しいものだった。
愛しい彼女がいて、そんな彼女を受け入れてくれる両親がいて。

彼女…キョーコには驚く事ばかりの連続だったようだけど、今は作った料理を誉められて満足そうにからになった器を片付けている。
一緒に空いた皿を片付ける俺。

「ごめん。驚いただろ?」
「そうですね。驚きましたけど、ここまでくるといっそ気持ちいいですよ。」
「そう言って貰えると助かるよ。君にドン引きされたらどうしようかと思った。」
「少なくとも、私が朝に作ったお料理、全部無駄にならなくて安心しました。」
「そうだね。」
「美味しいって言って貰って、食べて貰って……それって幸せなんだなって思いましたから。」

彼女は本当に嬉しそうに笑ってくれた。

「二人とも洗いものは後にして、コーヒーでも飲みましょ。」
「一息ついてから、みんなで洗おう。すぐに片付くぞ。」

積み上げた皿を運びながらキッチンに入って来た父さんと母さん。

「お二人とも、座っていて下さい。私がやりますから。コーヒーも私が…。」
「あら、いつもやってるのよ。これでも主婦なんだから。」

大分変わった主婦ですけどね。

「毎日、これくらいはやってるんだ。気にする事はない。」

この量は一般的に見たら、普通じゃありませんけどね。

「コーヒーは私に任せてくれ。飛び切りうまいのを煎れてやろう。」
「キョーコ、父さんのコーヒーはDARUMAYAのコーヒーにも負けないよ。」
「DARUMAYAかあ。大将は元気かな?日本にいる間に挨拶に行くか。」
「うふふ。そうね。」
「えっ?DARUMAYAをご存じなんですか?」
「知ってるとも。昔、通っていてね。妻にもそこで出会ったんだ。」

そうだったのか。
あそこには縁があったんだな。

「それより、早くコーヒーが飲みたいわ。」
「そうだな。ジュリ、カップを出しておいてくれ。」
「お湯も沸かさないとね。」
「頼むよ。」

相変わらずのラブラブっぷりだな。

使い慣れたコーヒーミルで豆を挽く父。
それを覗き込む母。
二人の姿は仲睦まじい。

「いい香りね。」
「とっておきの豆を持ってきたからな。」

万年ラブラブカップルのこの夫婦を見て、子供としては困り果てたものだったが、今はうらやましいとさえ思う。
キョーコがもう少し甘えてくれたらうれしいのだけど。

「ここにいたら巨大な生き物に蹴られそうですね。」

それは俺も幼い頃から思ってたよ。
でも今はね、俺にも君という愛する人がいるんだ。
負けないラブラブっぷりを見せつければいい。

「今のうちに少し洗い物減しておこうか。」
「はい。それにしても素敵なご夫婦ですね。」
「うん。子供の頃から見てるから何とも思わなかったけど、今は…うらやましいかな。」
「……それって私に言ってます?」
「言ってます。君はもう少し俺に頼ってくれてもいいんだけどね。」
「十分頼ってますよ。」

多少強引だったけど、最終的にはこの同棲にも納得してくれた君。
君が俺と暮らすことを承諾してくれた事……それも、少しは頼ってくれてるって事になるのかな?
それなら嬉しいんだけど。

父さんがコーヒーを煎れている間、少しでも洗い物を片づけておく。
食器洗浄機も使用するけど、それだけじゃ済むはずもない。
後で父さん達も手伝ってくれるにしても、少しは減らしておかないと。

「そう言えば、オーブンに何か入ってるみたいだけど、何焼いてるの?いい香りがするね。」
「アップルパイですよ。」
「えっ?!いつの間に?」
「準備はしてましたから。パイシートは冷凍ものですし。もうすぐ焼きあがりますよ。あっ仕上げはお手伝いして下さいね。」
「もちろん。」

広くとられたキッチンに二組の男女。
きっと目には見えない大きな馬が蹴りあいをしているだろう。

そんな中でオーブンが焼き上がりを知らせる電子を鳴らした。

「あっ焼きあがりました。」
「じゃ、洗い物は中断だね。」

洗い物を中断して、オーブンを開けた。
甘酸っぱい香りとバターの香りが程よくて満腹だった筈なのに食欲を誘う。
彼女の作る料理はマジックみたいだ。
少し運動しないとまずいな。

「コーヒーが入ったぞ。冷めないうちに来なさい。」

コーヒーも準備ができたようだ。
俺とキョーコは急いでアップルパイの仕上げにかかった。



◆◇◆◇◆



彼女が即席だけど作ったというアップルパイはとても美味かった。

「美味い!!」

パイを丸々一つ平らげ、それでも足りないと二つ目に手を出す父さん。
皿には長方形のパイがもう一つ残っている。
母さんと俺とキョーコの分は一つのパイを三等分にしたものをケーキ皿に乗せて一切れずつ。

「本当に美味しいわ。」
「実な凄く簡単なんですよ。時間がなかったのであまり手を加えられなくて。パイシートは冷凍ものだし、中はカスタードクリームとクリーム状に練ったクリームチーズとリンゴをレモンとシロップで煮詰めたものを入れて焼き上げただけなんですよ。でも冷たくても温かくても美味しいんです。」

うん。
本当に美味しい。
不思議だな。
甘い物は苦手だったし、スイーツなんて久々に食べたよ。
彼女の作るものなら何でも食べられそうだな、俺。

「本当に美味しいよ。君はすごいよ。俺が慣れない料理に悪戦苦闘してる間にこんなのも用意してたなんて、気づかなかったよ。」
「簡単でしたから。」

俺を見上げてにっこり笑う彼女。

君の作るものはどれも美味しいけど君が一番美味しそうだ。

よし、今夜はいつもより頑張ろう!

そんな俺の決心など気付きもしない彼女は俺を虜にしてやまない笑顔をふりまく。
本当に幸せそうに笑う彼女。
その笑顔を作っているのは俺だと思っていい?
ずっと俺のそばで笑っていて。

俺も少しだけ手伝った彼女の手作りデザートと父さんが入れてくれたコーヒーを味わいながら、いろんな話しをした。
今日の出来事や最近の話題などなど。
中でも父さん達が一番興味を示したのは、俺とキョーコの出会いについて。
根掘り葉堀り聞いてくるのだけは勘弁してほしいよ。
俺が恥ずかしいから。

「あら。もうこんな時間。あなた、そろそろ帰りましょ。」
「そうだな。楽しくてつい長居してしまったよ。」
「えっ?」
「父さん?帰るって、どこへ?」

まさか、今日来てもうアメリカに帰るとかいうのか?

「ホテルをとってるんだ。」
「なぜホテルなんか?」
「お前たちの邪魔はできないからね。ここはもうお前たちの家だろう?」
「なにを言ってるんですか?ここはあなたが買ったものでしょう?」
「そうですよ。せっかく海外から帰っていらしたのにホテルだなんて。……あっ、私、下の自分の。」
「だめっ!!」

ほら、彼女が余計な気の使い方をし始めたじなゃないか。

「だめ、君は俺と一緒。」
「でも……。」
「あら、ここはあなた達の家よ。私達には私達の家があるのよ。ここじゃないわ。」
「明日も来るよ。食材は買ってきておくから心配いらないよ。」
「あなた、ブルーベリーも買わなきゃね。やっぱりお赤飯は私が作りたいわ。」

母さん、またあなたは……。

「さて、洗い物をしようか。みんなでやれば楽しいぞ。」
「そうね。」
「ジュリ、君とキョーコは拭く係りだ、蓮は食器を棚に片付けてくれ。」

そう言って腕まくりをしながら立ち上がる父さん。

コミュニケーションの場をキッチンへと移し、会話も賑やかなものになる。

「えっ?聞いてないよ。俺!」
「えっ?ご存知かと思ってたんですけど……。」
「知らないよ。音楽祭で優勝したら、コンクールに出場だなんて。しかも泊りがけ??」
「はい、音楽祭はコンクールの予選会も兼ねてるんです。うちのクラスは優勝候補なんですよ。コンクールの会場は毎年違うんですけど、今年は北海道なんですよ。児童も親御さんも張り切っちゃってて。」
「聞いてないよ!」
「蓮、早く片付けなさい。食器を置く場所がない。」
「蓮、数日くらい一人で我慢なさい。」
「片時も……仕事中さえ離れた事のないあなた方に言われたくありません。」
「どんなお仕事されてるんですか?」
「そんなに大きくはないが、一応、これでも社長なんだよ。ニューヨークに小さなジュエリーショップもあるんだよ。」

その小さな店に出入りするのは、ハリウッドスターや大富豪と言われる人間ばかりですけどね。
そういえば、某国の皇太子も訪れたとか……。
とりあえず、キョーコには黙っておこう。
その方がいいような気がする。

「私たちは仕事上でもパートナーなのよ。この人のサポートなんて私にしか出来ないんだから。」

ジュエリーデザイナーと社長秘書を兼任してる人なんてあなたくらいなものですよ。

「君がいないと仕事にならないからな。」
「うふふ。あちらに帰ったらスケジュールが詰まってるわよ。覚悟してね。あなた。」
「頼りにしてるよ。」

本当に仲がいい。

……………………やはり、二人にはホテルにさっさと帰って頂こう。

これ以上見せつけられても面白くないし、キョーコと二人きりにもなりたいし。

俺はたまっていた食器達を棚へもどす作業を再開した。



◆◇◆◇◆



ーーーーチン。

待っていたエレベーターが到着した。

「私達はこれで失礼するよ。」
「また明日ね。蓮、キョーコ。」
「お休みなさいませ。」
「部屋の鍵はありますよね?明日は部屋で待っていて下さい。」
「そうさせてもらうよ。じゃお休み。」

エレベーターに乗り込む二人を見送った。



明日も賑やかになりそうだ。








8へつづく
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