BREEZE ~真夏のシンデレラ~

季節は春。
桜の花が開花して景色に柔らかな色を添える。
そんな春を恋の季節と例える人も少なくない。
俺にとっての恋の季節はいつだろう。
少なくとも春ではない。
思い出すのは、あの夏の夜。
夏の夜、俺は彼女に二度も恋をした。
初めて彼女に恋をしたのは、もう随分と前の事。
俺の初恋。
俺が10歳で彼女が6歳。
恋というには幼過ぎたかもしれないが、俺は彼女が好きだった。
そう自覚した夏の夜。
特別な夜だった。
忘れられない夏の夜の出来事。
ときめく胸に心地好い風を踊らせて、軽やかにステップを踏む。
まばゆいばかりの彼女の笑顔は確かに俺に向けられたもの。
その笑顔に初恋を自覚した。
初めての恋。
好きな女の子と過ごした特別な夜。
十数年の時を経てさえ色褪せない夏の思い出。
そして今、この手の中にあるのは、幼かった俺をあの夜に引き戻してくれる大切な宝物。
真夏のシンデレラが残した君と出会った確かな証。
君が残した夢のカケラ。
今夜、君に全てを打ち明けようと決めた。
幼かったあの頃。
君の側にある事ができなかった自分。
だけど、今は違う。
必ず君を捕まえるよ。
君は俺だけのシンデレラなのだから。



◇◆◇◆◇



遠くに聞こえる賑やかな音。
独特の音を響き渡らせる打楽器や高い笛の音。
賑やか雰囲気が離れたここにも響く。
今日はお祭りがあるのだと旅館の人が言っていた。
花火も上がるから見に行って見てはと奨められたが、騒がしい場所は好きではないと、一人いつもの河原へと足を向けた。
そこには今日も昼間、一緒に遊んだ彼女があった。
昼間とは違い、日本らしい祭の衣装……浴衣を着て、背中を大きなリボンでかわいらしく結わえ、少しだけメイクした彼女。
いつものツインテールに緩やかなウェーブをかけて、かわいらしいガラス細工の髪飾りをつけた彼女。
彼女が世話になっている”オカミサン”がやってくれたらしい。
いつもより華やかに着飾った彼女はとてもかわいくて、俺にはお姫様みたいに見えた。
そんな彼女だが、ここへ来た時は寂しげな顔をしていた。
一緒にお祭りに行くはずだったショーちゃんが他の女の子達と先に行ってしまったらしい。
まだ明るいにしても、もうすぐ日も暮れるという時間に小さな子が夜にこんなところに一人でくるなんてと、思ったが、同じ子供の俺が偉そうに言えた事では無かった。
何よりも綺麗な彼女に会えて嬉しくなって、時間が経つのも忘れて二人で話しこんだ。
帰りには俺が送っていけば問題ないだろう。
いつしか月は上り辺りを明るく照らし出す。
高い笛の音と太鼓の音が微妙に響いてきた。
独特の拍子に合わせて独特の音楽が流れて微かに聞こえてくる。
「踊ろうよ!」
といわれても日本のダンスは知らない。
「……この世界のダンスは知らないんだ。ごめんね。」
俺を妖精と信じている彼女が不思議にも思わない言い訳。
「妖精の世界にもダンスがあるの。」
「あるよ。教えて上げようか?」
「いいのっ!?」
「いいよ。」
目を輝かせている君。
さっきまでは「ショーちゃんとはぐれちゃった」って半ベソを書いていたのにね。
「手を出して。右手はこう、左手はこっち。もっと俺にくっついて。」
……俺は口でリズムを刻みながら、彼女をリードする。
「そう、上手だね。」
「コーン。これは何て言うダンスなの?」
「これはね、”ワルツ”っていうんだよ。」
「これがワルツ?私、知ってるわ、シンデレラが舞踏会で王子様と踊ったダンスだよね?」
「そうか。じゃあ、今だけ俺が君の王子様になってもいいかな?」
「じゃ私はシンデレラ?」
「そうだよ。」
一度、彼女から離れて、目を閉じる。
俺は今だけ君の王子になる。
久しく忘れていた感覚が蘇る。
演じる事への喜びと楽しさ。
目を開ければ俺は王子で、彼女がシンデレラ。
「私と踊って頂けますか?美しい姫君。」
「はい。王子様。」
月明かりの下、川のせせらぎを音楽にして、彼女とワルツを踊った。

夏のシンデレラ。

二人、ー夜限りのシンデレラの物語を紡ぐ。

月明かりに照らされた小さな女の子はいつもより大人びて見えた。
シンデレラの物語はシンデレラがどうしたのかしか書かれていない。
名前も知らない美しい少女に出会った王子が何を思い、どんな恋をして、どんな風に彼女を手に入れる為に自身が行動したか何て書かれてはいない。
一度出会っただけの女性の為に、たった一つの手掛かりを元に国中を探し回るなんて、普通じゃない。
どれだけの思いを抱えていたんだろう。
どれだけ、その女性に心を奪われていたんだろう。
舞踏会の夜だって、王子はどんな風に迎えていたんだろう。
シンデレラに出会うまではつまらないとか、退屈だとか思っていたかもしれない。
そこに彼女が現れたんだ。
そして、恋をした。
どれだけ眩しくうつったんだろう。
どれだけ心を奪われたんだろう。
今の俺にはまだ早いのかもしれないけど、ちょっとはその気持ちが分かるような気がするよ。
だって俺は君に惹かれているから。
今だけでいいから、俺を君の王子様にさせてほしい。
今、君が見つめているのは俺一人。



ドーンという大きな音がして、空を見上げれば、鮮やかな色彩が空に飛び散る。

「コーン!花火だよ!」
「うん。きれいだね。」

本当に綺麗なのは君だけど。



二人で空を見上げる。
二人寄り添ったまま、花火を見ていた。

最後の花火が空に上がったら君は帰ってしまうんだね。

俺を一人残して去っていく君を俺は心で追い掛けるんだ。



君は夏のシンデレラ。



花火が終わり、彼女を世話になっているという旅館まで送り届けた。
まさか、小さな女の子を一人で帰すわけにはいかないし。

「おせーよっ!」
「あっ!ショーちゃん。」

大きな旅館の前で、彼女と同じ年くらいの男の子が待っていた。

「コーン!今日はありがとう!!」
「どう致しまして。」
「また、明日会える?」
「うん。また明日。」

明日が最後になるけどね。
彼女にはまだ言えなかった。

「何してんだよ!俺が一人で帰ったら怒られちまうだろ。」

随分と身勝手な彼女の王子様。
彼女をおいて別の子と遊びに行ってしまったくせに。
それでも、彼女にとっては彼だけが王子様なのだ。
俺じゃない。
俺はシンデレラの王子様にすらなれない。

だから、俺達の物語はここまで。
夢をありがとう。
俺のシンデレラ。



次の日、彼女と最後の別れをした。
彼女と別れ、両親の待つ滞在先へと歩く。
そこで気付いたキラリと光る何かがあった。
手にしてみるとそれには見覚えがあった。
夕べ、彼女がしていた髪飾りだ。



キラキラしたガラスの髪飾り。
彼女の元には対になる髪飾りが合って、その片割れを俺が今持っている。
まるであの物語みたいじゃないか。
そう、この髪飾りは、俺のシンデレラが落とした彼女へと繋がる唯一の物。



俺は、シンデレラに恋する王子になった。
いつか、これを君に返せる時がきたら、本当に君の王子様になれるのかもしれない。



◇◆◇◆◇



時は過ぎて、やっと彼女に辿り着いた。
君は忘れてしまったかもしれないね。
髪飾りの事なんて君はもう。
君があの一夜だけ、俺のシンデレラになった事なんて、君の記憶にはない事。
君はただ、妖精の王子と疑わない存在とワルツを踊っただけ。
でも、お願いだ。
思い出して。
あの夜の事を。

「君に返したいものがあるんだ。」



君は夏の夜のシンデレラ。



「コーン?」
「久遠だよ。キョーコちゃん。」



今度こそ、俺は君の王子になる。



「夏が来たら、行ってみようか。あの場所に。」
「………。」
「そしたら、また踊って頂けますか?」
「はい。喜んで。」



君は俺だけのシンデレラになる。




accessの『SUMMER NIGHT BREEZER』という曲からの妄想です。

最近ちょっと思う事があって、原点に戻ってみようと考えています。

二次……借り物……原作があっての創作な訳だし、自分やり過ぎてないか?とか最近よく思うわけで。

人様の読んでても、やっぱりそう思う事が多めになってきてるなと感じるわけで。

特に自分かな。

なんか、今分かるな『大御所様宅を間借りして掲載して貰っていた私と自分でblog開設して掲載してる私じゃ別人』と言われた事があるんだけど。
うん、なんか分かる。

ダメじゃん、自分。

初心忘れるべからず……だよね。

今更だけど。

私がそう思う=他にもそう感じる人もいるはず。

だからごめんなさい。

ちょっと初心にかえったつもりで原作にそった感じで書いてみました。

えっちがないとつまんなぁい……という人もいるかと思うんだけど、人それぞれ。
そして書き手と読み手の違いもあると思う。
自分でさえ、書きたいものと読みたいものが違うと思う時あるもん。

だから、『自分が書いてるもの=他の人も読みたいと思ってるもの』とは思えないこの頃。

やり過ぎな二次を見て、苦手になった事がある私。
もうあのジャンルには首はツッコミたくないとさえ思う程に苦手になりました。
そんな経験から思うのは、『そこまで読者は希望してない』って事なんだよね。

やっぱり、やり過ぎはいかんですよね。

えっちばっかりとか、もう誰だかわかんないキャラクターとか、オモイレの有りすぎるオリジナルキャラクターに株を奪われてる主要キャラクターとか……そんなのにはしたくない。
オリジナルキャラクターごときに立場奪われるなんて……情けない以外のなんでもないですよ。……自分で昔書いたSSのオリキャラみてもゲーとか思いますもん。←それじゃ棚上げ?
使い方うまい人のはいいんだけどね。
でも下手に使うもんじゃないな。後で自分が恥ずかしい思いをするしね。
穴があったら入りたいっつーの!



そう思う月華です。



私の独り言と流してくださいませ。



ではまた。



月華



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