俺と彼女と彼等の実情 5

「最上さん。食事に行こう。」

仕事が終わり、帰り支度をしている彼女に声をかけた。

東京支社長のポストが暇なわけではない。
今日だって、鬼のように仕事をした。
舞い込んだトラブルも、即座に対応して、集結させた。
相手あっての事である以上、不足の事態はあって然るべき。
ようはトラブルをいかに迅速に処理出来るかが、重要だ。
その上、社さんと最上さんという双璧が俺をサポートしてくれている。
おかげでサクサクと仕事は進み、後は帰るだけ。
接待の予定もない。
せっかく早く帰れるのだし、あの双子に邪魔されないうちに彼女を掻っ攫ってしまおう。
俺は早速行動に移した。
移した結果………。

「でも……。」

戸惑う彼女。
彼女の場合、夕飯を作りに来てくれと頼む方が捕まりやすい。
というか、それもどうかと思うのだが。
相手が自分であるため複雑な気分だ。
これでよく無事でいられたものだ。
あの双子の努力の賜物か。
そんなとこだけは、相変わらずいじましい。
そんな俺や彼等の真意を知らぬままの彼女。
男の心理を知らぬ彼女を言いくるめる手段はいくらでもある。
あの双子がいない今なら、尚の事。

「寂しい一人暮らしの男の食事に付き合って貰えないかな?」
「支社長。おもてになるのに。どうしてお一人なんですか?不思議でしかたがありません。」

心底、不思議そうな顔をする彼女に俺の心がチクリと痛む。
彼女はもう俺の事なんか忘れてしまったのだろうか。

「そういう君も彼氏いなかったよね。」
「えっ!?」

驚いた顔の彼女。
この反応はなんだろう。

「どうしたの?」
「なっ……なんでもありませんっ!」
「最上さん?」

彼女は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
この反応は、なんだ?
何故、赤くなる?

「しっ支社長!参りましょうっ!!お店が閉まっちゃいますよ。」

時計が示す時間は6時半を過ぎたばかり。
閉まるような時間ではない。
何かをごまかすように俺の腕を引く彼女。
何だ?
……………まさか、好きな相手がいて、その照れ隠しか?
冗談じゃないぞ。
そんな事が許せるものか。
とにかく何とかして聞き出そう。

逃がさない。
絶対に。



「支社長…………。」
「ん?何?」
「なんでこんな高そうなお店に。私……払えませんよ〜っ。」

オロオロする彼女。
本当にかわいいな。

「いいんだよ。俺のおごりだから。」
「そんな訳にはまいりません!」
「お弁当や夕飯のお礼だよ。君、材料代すら受け取ってくれないからね。」
「でも……。」
「誘ったのは俺。だから大人しくおごられなさい。ね?」
「すいません。」
「俺としては”ありがとう”の方が嬉しいな。」
「……ありがとうございます。」
「よろしい。」



グラスに注がれたワインの芳香。

「うわぁ。綺麗な色。」

彼女の為に頼んだロゼワイン。
彼女には透明感のある赤が似合いそうだから、それにした。

「ごめんね。俺、車だから、付き合えないけど。」
「私も支社長と同じものでよかったのに。」
「今度はお酒も付き合ってね。」
「支社長、お酒、強いのに無理ですよ。」
「自分のペースで構わないから。ね?」
「了解しました。」

それから、二人で食事してあっという間に時間は過ぎていく。
程よく酔った彼女を助手席に乗せ、自宅へと送る。

「最上さん。大丈夫?」
「大丈夫です。」
「ごめんね。無理にすすめちゃったかな。」
「大丈夫ですから。でも今日はありがとうございました。」
「どう致しまして。」

彼女を酔わせたのも計算のうち。
多少酔った状態なら聞き出せるかもしれない。
予想外だったのは、予想以上にアルコールに弱かった事。
早く聞き出さないと眠ってしまうかもしれない。
その時は次の機会にするけど。

「最上さん。今好きな人…いる?」

ストレートに聞いてみた。

「いますよ。」

胸がチクリと痛んだ。
だからといって諦める気はないけれど。

「その人、支社長のお名前と同じなんです。」
「えっ。」
「その人が言ってくれたんです。必ず私を迎えに来てくれるって。」
「………。」
「……お嫁さんにしてくれるって約束して……だから…わた……し………。」
「…………。」

寝入ってしまった彼女。
やっぱり彼女はキョーコちゃんだった。
静かに路肩に車を停めた。

「れん君。」

それは俺の名前。

「キョーコちゃん。」

俺達の恋は終わっていなかった。

「キョーコちゃん。遅くなってごめん。あの時の約束、まだ有効なんだね。これから君を迎えに行ってもいい?」

眠る彼女の唇にそっとキスをした。
触れるだけのキスを。



「最上さん。起きて。」
「ん………。ぁれ?わた…し……っ!?」

覚醒したみたいだ。

「君の家、この辺だよね?」
「ししししし…支社長っ!すいません。私、眠ってしまって!」
「別に構わないよ。」
「構わなくありませんっ!!」
「それより道案内して。さすがにこの先は解らないから。」

本当は住所も把握しているけれどね。
顔を真っ赤にした最上さんの道案内で、一軒家に着いた。
小綺麗な高級住宅地、明かりがついている。

「支社長、よろしければコーヒーでも。」
「いいの?」
「いいも何も、ぜひ。」
「ありがとう。お邪魔するよ。」

空いているスペースに停める。

「どうぞ。」

促されてドアの前に立つ。
ここが彼女の家。
彼女がドア開けると……決まって。

「キョーコちゃーん。お帰りなさぁい。」

彼女の母親が明るく出迎えてくれる。
全く変わっていない。
恐ろしい事に、彼女の母親は見た目さえ記憶の中のままだった。
俺の母も相当な若作りだが、彼女は少なくとも5人の子供を産んでいるのだ。
にも関わらず、この変化の無さはなんなのだろう。

「あら、お客様?」
「ママ、今日は支社長に夕飯をご馳走になって、そのまま送ってきて頂いたの。」
「まあ、ありがとうございます。」
「お邪魔致します。LME東京支社の支社長を勤めております敦賀蓮です。」
「敦賀……さん?」

覚えがあるらしい。

「全くお変わりがないですね。昔、隣の家に住んでいた蓮です。」
「蓮君なのっ!?」
「しっ支社長おっ!」
「今日は彼女を迎えに来ました。お約束通りに。」



これは先制攻撃。
俺は必ず彼女を手に入れる。






安直な展開でごめんなさい。
ではまた。


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