恋心 2nd stage 〜FIRE BALL〜

デートの前に立ち寄りたい場所があると言われて辿り着いたのは美容院だった。
開店前のかなり早い時間……予約でもしてたみたい。
中に入ると小柄な女性が待っていた。
年の頃は20代前半といった感じ。
「蓮ちゃん!!」
小走りでやってきた女性は、先生に抱きついた。
「っ!!??」
誰っ?えっ!?この人、先生の何っ!?
目の前で繰り広げられる光景に私は混乱した。
「もうっ!全然、帰って来ないんだもの。心配してるのに〜ぃ。」
今度はぷりぷり怒りだした。
「父さんには、毎日学校で会ってるよ。」
「ダーリンばっかりずるいわ!!」
「ごめん。ごめん。」
……えっ?家族?先生は毎日学校でお父さんに会ってるの?
……で、この女性にとってはダーリン?
って、どういう事!?
先生のお父さんが”ダーリン”……それって……どう見たって20代前半のこの女性って……。
「あ、ごめんなさい。彼女をほったらかしにして。さあ、紹介してちょうだい。」
女性は先生から離れると真っ直ぐに私を見つめて柔らかく微笑む。
「キョーコ、ごめんね。改めて紹介するよ。俺の母さんだよ。」
「はじめまして、蓮の母ジェリー・宝田です。美容師やってます。」
茶目っ気たっぷりにウィンクまで添えた先生のお母さん。
反射的にかろうじてお辞儀はできたけれど、頭はパニック状態だった。
どうみても20代前半の姿。
もしかして、血のつながらない……。
「キョーコ。言っとくけど、もうこれでも四十をこえてるからね。有り得ないくらい若作りで、妖怪じみてるけど。」
「蓮ちゃんっ!!妖怪ってどういう事!?ひどいわっ!!日々の努力の賜物よっ!!」
…………ホントにお母さんなんだ。
ママより、若作りな人を始めてみた。
それに”宝田”?
あの学園内で”宝田”といえば、理事長しかいない。
という事は……先生は、理事長の息子??
でっ、でも苗字が違うわ。
「あら。もしかして、彼女、知らないの?ダーリンの事。」
「……まだ、話してません。」
「ダメじゃないのっ!!」
「キョーコ。ごめんね。気付いたと思うけど、理事長は俺の父親なんだ。敦賀は母の旧姓なんだよ。理事長の息子のままじゃ仕事しづらいから敦賀を名乗ってるんだ。」
いろいろとグルグルする思考。
こんな小柄な女性からこんなデカイ息子が生まれて、その息子は日替わり民族衣装でありとあらゆる手段を使って現われる理事長を父にもち、学園理事長たる父親は三度の飯より愛が好きで可笑しな授業を必須科目に盛り込む変じ……もとい……自称”愛の伝導師”。
「キョーコ?」
「先生のお父様は…理事長なんですね?」
「うん。」
「入学式にリオのカーニバルを再現して自分も踊りながら壇上に登場したあの理事長が先生のお父さん。学園祭のダンスパーティーでプロのダンサー引き連れて仮面舞踏会をしてましたよね。他にもイベントの度に必要以上に何かしらやって………。ある日、呼び出されて理事長室に行ってみたら、闇のブローカーみたいな姿で”ここにサインしろ”と演劇部の予算の最終確認書を差し出したり、夏にはアナコンダのなっちゃんとプールで泳いで学園中大騒ぎに……。中国の皇帝やファラオや公家や海賊だった時も……。卒業式では卒業生の私達まで全員レッドカーペットの上を仮装で歩かされ………。私、まともな姿の理事長を3年間見た事がありません。あれが…先生のお父様……。」
「ごめんね。あれが父だよ。」



頭がグルグルする。
「かわいいわ〜〜。」
妖精さんが私の周りをグルグル回る。
「まぁ、髪もつやつや。」
妖精さんが私の髪に触れている。
「お肌もツヤツヤ。」
妖精さんが私の頬を……。
「こんな可愛い娘が欲しかったの〜。」
「母さん……、その辺にしておいて下さい。彼女が困惑してます。」
先生の声でハッとした。
そうだ!相手は妖精じゃなかった!!
先生のお母さんっ!!
「すっすいません!!ご挨拶が遅れました。最上キョーコ、T大1年、独身です!!」
……って、私、何言っちゃってるの〜〜?
「でも近い将来、俺のお嫁さんになるから。」
「楽しみだわぁ〜。マリアにもちゃんと貴方から言うのよ?あの子お兄ちゃんっ子だから。」
「近々、帰りますよ。父さんにも改めて紹介したいし。」
「そうねぇ。家では最上君なら安心だろとか言ってるけどぉ。」
困惑する私を置き去りにして話しはどんどん進む。
「でも、まさか蓮ちゃんの彼女がジュリエナのお嬢さんだったなんて〜。」
え?母を知ってるの?
「俺……話してませんよ。どっからの情報ですか?」
「ジュリ本人からよ〜。」
「はぁっ!?」
先生の驚きが、そのまま私の驚きになる。
どうしてママがっ!?
「彼女、”娘に彼氏が出来た”とか言って、突然うちに来たのよ。それでね、うちで最近の蓮ちゃんの写真を見て、ジュリもびっくりしてたわぁ。ダーリンは前から蓮ちゃんが学校の生徒に片想いしてるの知ってたみたいで、”ついに根性出したか。あのヘタレがっ!”って、もうその後はお祭り騒ぎよ?マリアが、ちょっと拗ねちゃったけどぉ、今は蓮ちゃんの彼女に会えるのをすごく楽しみにしてるのよ。あの子ったら今日も一緒に行くってきかなくて。」
きゃっきゃ、きゃっきゃとウカレモードの先生のお母さん。
いったいママとはどういう関係なのぉ〜〜っ?
「母さん、彼女のお母さんとは、交流あったんですか?」
「あら、話してなかったかしらぁ?彼女がモデルやってた時からの付き合いよ。」
「俺は”メイクを担当した事がある”としか聞いてません!!」
「あらぁ、そうだったかしら?私達、その頃から親友よ。」
「「ええ〜〜〜〜っ!?」」
先生と私の驚きの声がハモる。
「まぁ、息がピッタリねぇ。」先生のお母さんはのんびり言うけれど、私達にしてみれば驚くどころの話しではない。
ママが私に彼が出来て、上機嫌だった理由がここにあったなんて。
パパを追いかけてフランスに行く際も、躊躇う事無く彼氏になったばかりの先生に私を託した理由が、”親友の息子”だったからだなんて。
聞いてないわよ〜〜。
「さっ。二人ともデートする時間なくなっちゃうわよ。」
頭グルグルのまま、そこから連れ出され、ケープを首に巻かれて、今は椅子に座って大きなミラーに映る自分を見ている。
「本当に肌がキレイだわ〜。私のメイク魂に火をつける逸材よ。蓮ちゃん、見てなさい!ママ、頑張っちゃうから〜ぁ。」
ずらりと並んだプロのメイクセット。
私、先生と並んでもおかしくないくらいきれいになれるのかな。
先生とお似合いだって言ってもらえるようになれるかな?
そんな不安が過ぎる。
「大丈夫よ。あなたはこのままでもきれいだわ。」
「えっ……!?」
「きれいになれるのかな……顔がそう言ってたわよ。」
「あっ。」
「今でもきれいだけど、もっときれいにしてあげる。蓮ちゃんにはもったいないくらいにね。」
「お母さん。」
「いやぁん。お母さんだなんて〜照れちゃう〜。キョーコちゃん、あなたが自分を好きになれるように、5分であなたの人生を変えてあげるわ。」
先生のお母さんは、女神みたいだった。
それからきっかり5分。
私は大変身を遂げていた。
髪はきれいに大人っぽく纏められて、唇はグロスでツヤツヤに潤いを出されていて、いつもより、大人な雰囲気の自分。
すっかり大人の女性に変身した私。
だけど、着てきたお嬢様風の白のワンピースにもしっかりマッチしていて、不自然ではない。
「キョーコ。キレイだよ。」
「先生。」
先生……恥ずかしいです。
そんなに見つめないで下さい〜。
でも、私もびっくりしたの。
先生のお母さんの手が動く度に、確実にキレイになっていく私の顔。
お母さんは”ほんのちょっと手を加えただけ”って言うけど、別人みたい。
これって特殊メイク?
でも特殊メイクって5分でできちゃうもの?
「言っとくけど、特殊メイクじゃないわよ。近場でデートっていうから、多少は濃い目にメイクしたけど。キョーコちゃんの持ち味は消してないもの。キョーコちゃんはジュリに似てるわ。あの子もそう。衣装と化粧で様々に変わるのよ。」
そう……ママはそんなモデルだった。
「彼女を前にするとやる気にさせられるのよ。知ってた?彼女のコンセプト”魂に火をつけろ”よ。私もメイク魂に火をつけられたものよ。」
そんなママの子供に生まれたんだ、私。
自信持っていいかな。
だって先生の隣にいたいんだもの。
先生の隣で、先生の恋人だって胸を張っていたいの。
背筋をちゃんと伸ばして一緒に前を向いていきたい。
「さてと、問題は蓮ちゃんよね〜。どうしましょ。ちょっとやそっとじゃごまかせないわねぇ。この際だから、金髪にしてみる?」
「俺……月曜には仕事ですよ。」
「いいじゃないの。」
「”不良教師”なんて呼ばれたらどうするんですか。」
「生徒に手を出して……もう十分”不良教師”じゃないの。今更……ねぇ。しかも一緒に住んでて……。」
「どこまで知ってるんですかっ!?」
「あら、ホントに一緒に住んでるの?彼女、大学に入ったばかりでしょ。気をつけて上げなさいね。私個人としても、この見た目でおばあちゃんなんてまだ言われたくないわぁ。」
「〜〜〜っ!?」
えっ…とぉ……。
もう何が何だか……。
恥ずかしい事言われたけど、それよりも先生とお母さんのやり取りが凄すぎて、言葉が出て来ない。
「ほら、蓮ちゃん。早く椅子に座って。時間なくなっちゃうわよ。ホントに手のかかる子なんだからぁ。」
「母さん……もういいです。好きにして下さい。……染めるのだけは勘弁して下さいよ。」
「というわけだからぁ、キョーコちゃん、もう少し待ってねぇ。とびっきりのいい男にしあげるからぁ。」



お母さんのすぐ隣に小さくしゃがみ込んだ先生をかわいいなと思ってしまった事は先生には内緒。







続いちゃう。
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