甘いワナ 『お前は壊れたままの俺の天使。 〜尚〜』  修正版

ちょっぴり直しました。
ほんのちょっとです。



甘いワナ 『お前は壊れたままの俺の天使。 〜尚〜』  修正版





”ガ――――ン!!”という音が廊下中に響き渡る。
壁に力の限り叩き付けた拳。
ビリビリとその衝撃が自分自身にも返ってくる。
キョーコは耳を抑え、顔を顰めていた。
耳元に拳を打ち付けたのだから当然か。
この俺に、こんなマネをさせた元凶である犬ヤローはといえば、全く動じた様子もない。
相変わらずスカしてやがる。
その程度といったら、あのいけ好かない”どこぞの人気俳優”の上を行く程のスカしっぷりだ。
あんだけボコってやったのに性懲りもなく、またキョーコにちょっかい出してきやがって。
「何してやがる・・・・・・。」
無理矢理に搾り出した声は自分でも驚く程に低くてかすれていた。
「相変わらず、手が早いな。不破。」
テメェの女への手の早さよりはマシだっての。
悪役面にしたって、お互い様だ!!
「クールが売りの”不破尚”は作り物か。この程度で崩れるとは随分と粗悪な作り物だな。」
いちいち気に障る男だ。
キョーコに近寄る男はどうして、こうもアクの強いヤツばっかりなんだ。
その辺にゴロゴロいるような並の男なら、一睨みで簡単に追っ払えるのに、コイツ等ときたら引き下がる事を知らない。
「質問に答えろよ。何してやがる。」
「この状況でそれを聞くのか?分からないなら、続きを見ていくか?」
怯える様子もなく、クスクスと笑うキョーコの唇にすっと指を滑らせた。
ただ、それだけの行為に俺は激しく反応していた。
「っ!キョーコっ!!」
張り付いたレイノを引っぺがし、キョーコの腕を掴んで強引に引き寄せた。
「キョーコ!お前、何もされてねぇだろうなっ!?」
思い出すのは軽井沢でのキョーコの姿。
恐怖に震えた身体、何かに縛られたように声さえも失った唇、誰かに助けを求めるような瞳。
あんなキョーコを見た事はなかった。
助けに入った時の驚いたような、ほっとしたような、そんなどちらともとれそうな表情は忘れもしない。
『俺を待っていたのか?俺に助けを求めてくれたのか?』
そう思った瞬間に俺はお前への気持ちを自覚した。
認めたっていうのが正しいか。
俺の記憶の中の……こんな関係になる前までのキョーコはいつも、どんな時でも笑っていた。
その裏にたくさんの悲しみがある事も俺は知っていた。
俺を唯一の支えとして生きてきた事も知っていた。
それを知っておきながら、愚かな俺はお前を捨てた。
いや、捨てたんじゃない、失ったんだ。
思い出と一緒に俺は大切なモノを手放してしまった。
変わりに目の前にあるのは俺は知らないキョーコ。
こんな冷めた笑みを浮かべるお前を俺は知らない。
だけど、こんな風にお前を変えてしまったのは”俺”。
俺の目の前で壊れたお前。
まさか二度もそれを見る事になるなんて思いもしなかった。
一度目はお前を捨てたあの日。
二度目は再会したあの日。
お前にとっては演技だったのだろうが、俺にとっては痛過ぎる現実の再現だった。
お前が演じたあの天使は、本当にお前そのものだったよ。
お前は……壊れたままの俺の天使。
壊れたままの天使は無情に言葉を放つ。
「見てたんならわかるでしょ?あんた、いいタイミングで来たわよ。」
俺の存在など、”楽しむ為のおもちゃ”とでも言われているような気がした。
「でも、よく私だって気付いたわよね。前に会った時なんか、直接会話してさえ、気付きもしなかったわよ?まぁ、覚えてないでしょうけどね。」
PV撮影の時の事を言っているわけじゃないのか?
知らないうちに俺は、どこかで会っていたらしい。
本当にマヌケだ。
しかし、どこで?
今ならどんな姿になってもお前だって見抜ける気がするのに。
今、目の前の女を”キョーコ”だと認識できたのは奇跡でもなんでもない。
漂う雰囲気すら別人のような目の前の女を一目でキョーコだと確信した。
何故?・・・その理由すら分からない。ただの直感。
本当に別人のようなお前。
顔を合わせれば、悪口雑言飛び出し、何やら妖気めいたものまで放つはずなのに、今のキョーコはただクスクスと笑うだけ。
『何を考えてる?キョーコ。』
姿を見破っても、考えている事が全く分からない。
幼少より傍にいたのに、お前はもう俺の知っているキョーコじゃない。
平凡で地味でつまらない女、そう思っていたのに、お前はそんな言葉で納まるような女ではなくなっていた。
『俺は何を見ていた?キョーコの何を……。』
俺は何も見ていなかった。
近過ぎて見えなかった。
だから、捨てた。
バカな俺は、失ってからもしばらく手放したモノの大きさに全く気付かなかった。
再会して、言葉を交わして、コイツに触れて、初めて知った”失くした物の重み”。
”捨てておきながら、また欲しくなった。”なんて都合のいい我侭だという事は分かっている。
分かっていても、気付いてしまった今、手放すなんて無理だ。
だから、もう一度、手に入れる。
『もう一度俺を見ろ。キョーコ。』
そして、今度こそ俺が守る。
二度とお前を怯えさせたりはしない。
怯えた顔なんてもう見たくはない。
もうお前を泣かせたりなんてしないから・・・。
『俺の傍にいろ。』
そう望むのに、ついて出る言葉はいつもの憎まれ口。
「お前もこりねぇ女だな。何度、襲われりゃ気が済むんだよ。ああ?!」
穏やかに話したいのに。
「何もされてないわよ。」
笑顔が見たいのに。
「軽井沢での事を忘れたのかっ!コイツにされた事を!!」
抱きしめたいのに。
「あの時も、何もされてないわよ。そこのビーグルさんも言ったじゃない。『唇1つ奪えなかった』って。」
心配で、不安でしかたがないのに。
「キスされそうになってる時点で既にやばいだろう!!あん時も言っただろうが!ストッキングは伝線してるわ、衣装のファスナーは全開になってるわの、あの状況で何もねぇって言う方がウソくせぇ!!」
嫉妬で狂いそうなのに。
「元はと言えば、それだってアンタのせいじゃない。」
そう俺のせいなのに。
「助けてやっただろう!!」
守りたいだけなのに。
「相変わらず、恩着せがましい男ね。」
望む答えをくれないお前と素直になれない俺。
何処までも平行線な俺達。
この思いは伝わらないのだろうか?
『好きだ』と言葉にしても受け取ってもらえるのか?
「……とにかく、何もされてねぇならいい。」
「邪魔された俺としてはいい迷惑だったがな。」
当然のように割って入る声に、感傷に浸る暇さえ奪われて、一度は静まった怒りが再び湧き上がる。
そうだ、考えるのは後だ。
今はコイツを始末するのが先だ。
「てめぇとは、もう一度話し合う必要があるみてぇだな。」
キョーコを背後に庇いながら、ヤツと対峙する。
キョーコ命名”ビーグル”なんて呼び名は爆笑もんだったが、その実、あのちっこくて”愛くるしい”とか”かわいらしい”とか評される犬種で表すにはコイツはあまりにも禍々し過ぎる。
よくて狼、ともすれば魔犬。
曲作りの為の資料として手に入れた神話の中に出てきた”フェンリル”やら”ケルベロス”の方がよっぽど納得がいく。
単純に言えば”邪悪なバケ犬”だ。
こんなヤツをキョーコに近寄らせるわけにはいかない。
そしてもう一人、ここにはいないアイツもだ。
あの男にはコイツ以上に裏がある。
芸能界でも絶大な人気を誇る紳士面したあの男。
『温厚な紳士だと?笑わせるな。』
去年、軽井沢で遭遇した時のアイツの目。
あまりにもタイミングよく現れ、俺の前からキョーコをかっさらって行ったアイツ。
告白する気もない癖に、キョーコを獲られたくはないと無言で主張する。
相当に勝手な男だ。
俺も勝手だとは思うが、ヤツの場合は自覚がない分、性質が悪い。
そして、時折向られる底冷えするような、嫉妬さえ含んだ、人を射殺せそうな”あの目”。
どこが紳士なもんか。
腹の底でどす黒い感情が渦巻いているのがバレバレじゃないか。
『ふざけるのも大概にしろ!!』
そう何度、心の中で罵倒した事か。
それが、いつの頃からか、アイツのキョーコへの態度が変わってきた。
キョーコは気づいていなかったけれど、アイツが自分の気持ちを主張し始めた。
その一方で、キョーコに近づこうとする男を視線で威圧する。
冗談じゃない。
紳士面して、温和なフリをして、キョーコに近づく男を牽制する。
そんな表面と内面の裏腹な男にキョーコを渡せるはずがない。
もちろん、目の前のストレート過ぎるこの男にも。
『渡さねぇ。』
ふと気がつくと、傍らにあったはずのキョーコの気配がない。
視線を少し動かすと、自分達の傍を離れて”高みの見物”とでも言うように楽しげなキョーコの姿があった。
『何を考えてる。わかんねぇよ。』
熱くなっているのは俺達だけ。
『俺を見ろよ。キョーコ。』
本気になる事がこんなに苦しいなるなんて、思ってもいなかった。
『もっと早く気づいていれば、お前は俺のモノだったのか?』
もう遅いけれど。



一歩も引こうとしない魔犬を追っ払うのに夢中になっていた俺。
再び視線をキョーコに移せば、いつの間にかあの男がいた。
その並外れた長身を最大限に活かし、背後から覆いかぶさるように耳元に顔を寄せ、何かを囁いている。
そんなヤツの行動に血が逆流するような感覚に襲われた。
だが、それよりも気になったのは……。
『キョーコ??』
笑みをさらに深くするキョーコの様子で、嵌められたことに気付く。
まるで餌の血臭につられて、のこのこやってきた獲物を狙う捕食者のようだ。
罠とも知らずに近寄って、気がつけば抜け出せない檻の中。
捕らわれたのは俺とレイノ、そしてアイツ。
いつも俺を……俺達を狂わせるのはお前だ。
『キョーコ。』



俺だけを見て欲しかった。なのにお前は……罠にはまって動けない俺の前で……冷たく微笑むだけ。





次……蓮さんです。

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