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強く儚い者達 5《修正版》

白いクロスをかけた小さめな丸テーブル。
二人向き合って座る。
二人で座るにはちょうどいい距離感。
王宮には無駄に大きなテーブルしかないから、帰ったら俺と彼女の部屋にはこのサイズのテーブルを置こう。
俺としては同じ部屋でもいいんだけど。

そんな事を考えている俺の目の前にはぷいっと顔を背けた彼女。
その頬は紅く染まっていて……そんな姿さえ可愛らしいと思う。
そしてテーブルの上には食欲をそそる見た目と香りで自己主張をする食べ物達。
初めて見る食べ物だった。
一つ一つの食材は見知ったものだけど、形式というか……とにかくこんな風に食べるのは初めてだった。
一つ手でつまんで、口に運ぶ。
かじりついて………感動した。
美味い。

「凄く美味しいよ。これ。」
「食材をパンに挟んだだけです。」

彼女は、プリプリと怒っていた。
……本当に美味しいんだけど……これ。
薄切りにしたパンに焼いた肉や魚の揚げた物や野菜等を挟みこんだもので、手も汚れない。
肉と魚も程よく味付けされていて、野菜のシャキシャキとした食感もいい。
それらを挟み込むパンはふんわりしていてほのかに甘い。
王宮でも、こんなのは味わった事がない。
だが、これは彼女にとっては不本意なスタイルだったらしい。

「本当はちゃんとしたお料理にするはずだったのに……。」

拗ねながら、自分の分の朝食に食む姿が本当に可愛らしい。

「昨夜だって何も準備できませんでしたし。」

いや…昨夜は君の事でいっぱいいっぱいで、食べる事にはあまり関心も無かったし……等と言ったら、また怒られそうだから言わない。
それも俺の為にかと思うと嬉しくなる。
だけどね、こっちを向いてほしいな。
怒っている顔もかわいいけれど、笑っている顔がいい。
俺に笑いかけてほしい。
愛しい、愛しい君には、心から笑っていてほしい。

「………。」

………そんな愛しい彼女を俺は何故、彼女を忘れていたのだろう。
こんなにも愛しいのに。
そして彼女は何故、今になってこんなにも鮮明に思い出が湧き上がってきたのだろうか?

疑問を抱えながらも全部、残さず平らげた。
俺にしてみれば、有り得ない量を食べた気がする。
食べ終えた皿を見て彼女がやっと微笑んでくれた。

手早く、後片付けを済ませた後、彼女に外へ出ようと誘われた。
足元のおぼつかない彼女を強引に抱き上げて外に出た。
彼女が示す先に足を向けて、目の前に広がった花畑に目を奪われた。
咲いていたのは彼女が俺に贈ってくれたあの花だ。
一つ一つが小さくても、広い土地いっぱいに広がれば幻想的な世界に変わる。
この島そのものが、幻しのようにさえ、たとえられるのだが。
彼女と共にその場に座り込む。
視界が低くなって、さらに視界が狭まり、俺達二人だけが隔離されてこの場にいるかのような気分になる。
彼女が言うには一年中咲いているらしい。
お気に入りの場所なのだと笑顔で言う。

「さっきの料理は魔女が教えてくれたの?」

あの館にはキョーコ以外の気配はない。
ともなれば自分でやらなければならない。
かなり、苦労をしたのだと思う。

それにしても彼女は何故ここにいるのだろう。
俺が彼女を忘れてしまっていた事も何か関係があるんだろう……その理由も彼女は知っているんだろうか。

「お料理は島に来てから覚えました。村の方々に教わったんですよ。」
「そうなんだ。」

大分苦労したんだろう。
何せ彼女は国では王家に次ぐ権力を持つ大貴族の姫君という立場。
刃物なんて食事に使うナイフか、護身用の短刀以外は手にした事など無いだろう。
さらに料理なんて、……食材としては見た事があるけれど、それがどんな過程を経て食べられる物に変化するか、俺には検討もつかない。

「ねぇ、キョーコ。君はいつからここにいるの?」

彼女は前王家フワに次ぐ王家の血筋モガミの末の姫だったはずだ。
王位がヒズリ家に譲渡された今でもその地位も財力も権威も変わらぬままだ。
なのに……。

「ねぇ、キョーコ。君はどうして、こんなところにいるの?」

おかしいだろう。
彼女は国で王家に次ぐ権力を持つモガミ家直系の生まれ。
由緒正しきモガミの姫なのだ。
モガミ家の娘は彼女一人。
彼女の両親も彼女の歳の離れた兄達も、彼女は愛されていた。
なのに……。
あんなに大切にされていたのに。
誰も彼女がいなくなった事に何の反応もしめさなかった。
騒ぎにさえなっていない。
彼女が消えた事を誰も気付いていない。
いや……誰も知らない。
誰の記憶からもモガミに娘がいたという事実が消えているかのようだ。
俺の記憶からも彼女の事は消えていた。
あんなに好きだったのに…再会して彼女だと知り抱きしめずにはいられない程、彼女を思っていたのに。

そして、彼女は今ここにいる。
その理由は全くわからない。
何なんだ?
これは!?
何が起きている?
怒りさえ沸き上がった。

「キョーコ。君はどうしてここにいるの?」
「わかりません。」
「えっ?」
「分からないの。どうしてここにいるのかも。どうやってここに来たのかも。」
「どういう事?」
「記憶が無いの。曖昧だったりするところもあって。それに………。」
「それに?それに……何?」
「クオン様の事、私……忘れていました。昨夜まで……。」

どういう事だ?

「わからないの……。」

そう言った彼女の頬を滴が伝い落ちた。

「クオン様、私……自分が自分じゃない時 があるの。」



彼女が彼女じゃない時?



それが何を意味するのか、まだ何も分からない。
彼女自身さえ把握出来ていないのだ。
魔女ならその理由も知っているのだろうが、その魔女がまだ、時期ではないと姿を見せないのだから俺には成す術がない。
そんな無力な俺に出来たのは、涙を流す彼女を抱きしめる事だけだった。














少し修正。
前のは、4がけっこうふざけてました。
5はおふざけモードをひきずったままだったので、少し修正。

そんな、こんなで、中途半端なお話しですいません。
一応脳内年表がありまして、微妙に修正中です。

でも、中途半端。

どうか、お許し下さいませ。



では、また。



月華。




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