エレベーター 19話~22話 第一部(ミス・ルイーザ様作)完結 

ミス・ルイーザ様作の『エレベーター』記事の最後になります。
続きは月華が書かせていただく為、第一部として区切りをつけさせていただきます。
勝手で申し訳ありません。ご容赦くださいませ。
それではどぞ。


◆◇◆◇◆



エレベーター (19)


(Side蓮)

「・・・・・ということがあったんです。」

俺の車に乗り込んだ時にはもうすでに様子がおかしかった彼女。昨日の今日で、甘い雰囲気を期待していた俺は少々裏切られたような気がした。それくらい、彼女、キョーコの顔は険しかった。

・・・今朝のことを怒っているのだろうか・・・

とも思ったが、部屋で話を聞いて、俺は言葉を失ってしまった。その代わりに、沸々とした怒りが出てきそうだった。

「・・・緒方校長は、私の意見を尊重してくださるそうですけど・・・でも・・・。」
「でも・・・?」
「私、少し心配で・・・。学園長にも報告するって言われてましたから・・・。」

・・・あー・・・それは俺も心配だ・・・。

あの人は即OKしかねない。何でも派手に、何でも楽しく、何でも大げさにしてしまう人だから。父さんの結婚式も確かあの人がプロデュースして想像を絶するほどド派手になったって聞いたし・・・。不破の乱入など、あの人にとったら大歓迎かもしれない。

「できるかどうか分からないけど、俺からも学園長に頼んでみるよ。」
「敦賀さんがですか??」
「うん。学園長はね、俺の父の古い上司であり、今では友人なんだ。」

そうだったんですか!と驚くキョーコに少し安堵の表情が浮かぶ。

でも、このままではいけない。マンションでの待ち伏せに失敗して、今、奴はのうのうと、いや、かなり焦っているのだろう、芸能人にはご法度という、公私混同をしている。もし後日、奴と奴の事務所の公式な申し出が拒否されたら・・・?次は奴が一体どんな手を使ってくるのか・・・想像したくない・・・。

まぁ、一番の問題は、奴の気持ちに全く気づいてなくて

「そこまでして私をまた家政婦にしたいのかしら!?」

と、憤っているキョーコなんだろうけど・・・。こればっかりは俺から伝える訳にもいかないし、言っても信じてくれないだろう。それでも・・・

「一度、彼と正面向き合って話し合ってみるのもいいかもしれないよ。じゃないと、彼はいつまでも君の周りをウロウロすると思う。」

気乗りしなさそうに不安な顔をするキョーコの頭をポンポンと叩く。

「大丈夫。俺がそばについててあげるから。」

奴はきっと嬉しくないだろうけど・・・。

でも、まずは学園長に話をつけないと。公私混同している奴に音楽祭に来られては困る・・・。

時刻はもうすぐ9時。“まだ9時”と思う自分と、“もう9時”と思う自分がいる・・・。心の中で熱望していることを理性で押さえ込み、言いたくはなかった言葉を自然を装って口にした。

「そろそろ送るよ。と言っても階下だけど。」
「えっ・・・?」

・・・・・・。

・・・・・・?

・・・・・・え?

「あっ、いや、そうですよね!もうこんな時間ですし!それじゃ、あの、私はこれで・・・。」

俺の横で、顔を真っ赤にしながらカバンやらコートやらを慌ててかき集めるキョーコ。


・・・もしかして、俺と同じ気持ちでいてくれた・・・?


そんな期待感が一気に押し寄せる。昨日の今日でがっついてはいけない・・・。束縛してはいけない・・・。疲れさせてはいけない・・・。そんな真っ当な理由でもって固めていた理性の壁を、いとも簡単に飲み込んでしまうような大きな“期待”の波が・・・。

気が付くと、帰り仕度をしてソファから立ち上がろうとしていたキョーコの手首を掴んでいた。

「つ、敦賀さん・・・?」
「・・・ねぇ、キョーコ・・・。さっきの・・・『えっ』ってどういう意味?」
「・・・・っ!?」
「・・・帰りたく・・・なかったの・・・?」

キョーコの表情はとても正直で、耳まで真っ赤になってYESと言っている・・・。でもそれをちゃんとキョーコの口から聞きたいと思う俺は、少し意地悪なのかもしれない。

「ねぇ、教えて?」

細いキョーコの手首を引っ張ってソファに座らせ、手を、腕をキョーコに絡みつかせる・・・。キスができそうな距離まで顔を近づけて、キョーコ・・・と名前を呼ぶ・・・。理性はとうに飛んでいたけど、キョーコの口から本心を聞くまで、ジラせてみた・・・。

「俺は・・・正直帰したくなかったよ?」

耳元にキスをしながらそう伝えると、ようやく零れ落ちてきた。

「あ、あの、私も・・・その、もうちょっと一緒に・・・いたいな・・と思ってて・・・。」

クスクス・・・まぁ、合格かな・・・?

キョーコが腕に抱えていたバッグとコートを床に落とし、ソファの上で甘い甘い唇を味わう。

「ま、待って、敦賀さん・・・夕飯がまだ・・・」
「んー・・・それは夜食にしようか?まずは・・・」

また昨日と同じ・・・。止められない・・・。俺のわがままなのかもしれない。キョーコが俺を受け入れ続けてくれるから、どうしても止められない・・・。

また明日も同じかな・・・?社さんに顔のことを言われるのかもしれない・・・。

でも今は何も考えられない・・・。ただ、5感全部でキョーコを感じているだけ・・・。



・・・学園長への連絡は明日にしておこう・・・。


・・・そして、明日、キョーコに聞いてみよう・・・


・・・『一緒に暮らさないか?』と・・・




◆◇◆◇◆



エレベーター (20)


(Side 蓮)

LME学園内に、白い壁が眩しい、洋風の建物がある。まるで海辺の別荘のような、丸みを帯びたお洒落な外観。

皆、それを『迎賓館』と呼んでいるが、そこに立ち入り出来る者はかなり限られている。

その中にある、一際大きな部屋が、LME学園を統括する学園長の部屋。


―――学園長、ローリィ宝田。


「失礼いたします。」

忍者の格好をした執事に案内されて、久しぶりに、いや、数年ぶりに学園長室に入ると、目の前には、水戸●門の飛猿を思わせるコスチュームの学園長が立っていた。今日のテーマは江戸時代の忍び・・・か。

「久しぶりよのう、蓮。まぁ、座れ。」

久しぶりとはいえ、以前、日本に来たばかりの頃は、学園長室に入りびたりだったために、中の豪華絢爛ぶりには慣れている。学園長のデスク前にある黒い革のソファに腰掛けながら、どうやって話を切り出そうかと考えていたら、

「で、今日は何の用件だ?」

と、即本題に入られた。普段はもっと俺の周囲についてや、長い間顔を出さなかった理由などを聞いてくるはずなんだが・・・。


・・・何かある・・・?


とりあえず、無駄なことを聞かれない方が自分の為だと思い、俺も単刀直入に学園長に用件を伝えることにした。

「LMEの音楽祭に歌手の不破尚が事務所を通じて参加を申し込んできたと聞きましたが、それについて学園長はどうお答えするのかと思いまして。」
「ふん。俺に断って欲しいのか?」
「そうです。」

俺がそう即答すると、一瞬目を見開いた学園長は、クククと笑い始めた。

・・・この笑い方・・・嫌な予感がする・・・。

「心配するな。もうすでに断っておる。」
「えっ?」
「なんだ、俺が了承すると思ってたのか?」

意外な答えにビックリして声が出なかった。学園長のことだから、てっきり万歳了承した挙句、音楽祭を不破の事務所が提供できる以上の豪華極まりないコンサート風に仕上げるのかと思っていたから。

「LMEも芸能事務所を持っていることを、あちらは忘れていたのかもしれんが、第一に、公私混合する奴は嫌いでな。」
「!!??」
「彼は初等部の女教師に未練があったようだが・・・違うか?」

・・・っな!?!?

この人の情報網は一体どうなってるんだ・・・?

「・・・ご名答です。・・・ですが、なぜそれを?」
「あのな、出身校でも無い、テレビ放映もされない学園内の音楽祭に、突如無償での参加を申し込んできた時点でとっくに怪しいんだよ。だから最上先生と言ったか?彼女をピアノ伴奏に指定してきた時点でピンと来た。緒方校長からの話だと、最上先生も彼のやり方にはうんざりしていた様子だったと言うしな。これは彼女に会うための彼の愚かな計画なんだろう。」

・・・さすが、するどい。

「それに・・・。」

と言いながら視線だけ俺に向ける学園長がニタァと笑う。それだけで話の流れがどこに向かっているのかが分かって、俺は退散したい気になってきた。

「お前、この間初めて遅刻したそうじゃないか。」
「・・・・・・誰だって遅刻ぐらいしますよ。」
「ふーん、毎日7時20分には職員室入りしてた奴でもか?」
「!!」

・・・情報内容が詳しすぎる・・・。出所は・・・社先生かそれとも琴南先生か・・・?

「同じようなことを初等部の緒方校長も言っておったなぁ。その渦中の最上先生は毎朝早くて、無遅刻・無欠勤の真面目な先生らしいが、お前が遅刻したのと同じ日に珍しく朝礼ギリギリに来た、とな。」
「・・・・・・・。」
「しかも彼女は最近自転車通勤ではなくて、誰かに送り迎えしてもらっているらしい。確か・・・赤い、ポルシェだったかな?」
「~~~~~っ。降参です。そこまで情報があなたの耳に入っているのでしたら・・・。」

がっくり頭を垂れる俺の耳に、クククとまたも嫌な笑い声が聞こえた。

「お前もとうとう人を愛せるようになったか・・・。クーには伝えたか?」
「いえ、・・・・というか必要ないですし。」
「まぁ、いいだろう。・・・で、お前の恋の経緯でも聞こうじゃないか!」
「それこそ必要ありません。用件は不破のことだけでしたので、今日はもうこれで失礼させていただきますよ。」

未だ含み笑いをしている学園長を横目に、俺はさっとソファから立ち上がり、ドアの方へと向かう。後ろから「結婚式は俺に任せろ!」と聞こえたが、無視しておいた。例の忍者装束の執事に挨拶をし、迎賓館を後にした。厄介な人に知られてしまった・・・と思いながら。

・・・・・・きっと明日にでも父さんからメールが、いや、電話が入るんだろう・・・。

どんなに熱狂したメッセージを聞く羽目になるのか・・・と少々うんざりしながら、ポケットから携帯電話を取り出した。そこに1着のメール・・・。送信者の名前を確認するなり、ついさっきまでのどんよりした気持ちがすーっと晴れていくような気がした。

『お疲れ様です。
 今日は6時に終業できそうです。
 もし敦賀さんがお忙しいようでしたら、
 DARUMAYAでお待ちしています。』

現時刻、6:40。彼女はDARUMAYAにいるだろう。俺は駆け足で喫茶店の方へと向かう。

きっと彼女はミルクティーを飲んでいる。店が暇なら女将さんと話しているに違いない。そんな彼女の姿を想像するだけで、心が軽く、甘くなる。


・・・早くたどり着きたい・・・

・・・早く顔を見たい・・・

・・・そして、できることなら、抱きしめたい・・・




◆◇◆◇◆



エレベーター (21)


(Side 尚)

祥子さんから話を聞いた時、俺は近くにあったゴミ箱をガンっと蹴っていた。俺だって、少々強引かと思ったけど、あちらにとっても損な話ではないと高をくくっていた。だって、この俺が、無償で、ちっぽけな学園の音楽祭に出演してやるっていう話だぜ?だから、思ってもいなかった。まさか、―――断られるなんて・・・―――

「・・・それで、尚。この件で、社長から呼び出されてるわ。・・・行きましょう?」
「はぁ?今からかよ?」
「ええ。」

その時の祥子さんの顔は、今まで一度も見たことが無いくらい真剣で、どこか覚悟を決めているような顔だった。でもその時の俺には、人の気持ちを察してやれるほどの余裕は無かった。


・・・これは・・・全て、キョーコの奴に会う為・・・。

・・・ステージで輝く生の俺を見せ付けてやりたかった・・・。

・・・また以前と同じように、俺しか見えない女に戻したかった・・・。


そんな俺の頭の中に、キョーコの言葉がこだまする。


“私の人生にもうあんたはいないの!”


・・・・・・冗談じゃないっ!

「・・・チッ。」

悪態をつきながら社長室に向かう。祥子さんが社長室のドアをノックしたところで、俺は大きな猫をかぶった。



「今日届いたLME学園からの手紙には正直驚いたよ、安芸君。」

そう言いながら1枚の紙切れを社長がデスクの上に置いた。こんな紙切れ1枚で俺の出演は断られたのか・・・!心の底から何かドロドロしたものが湧き上がってきそうだったが、そんな俺を冷静にさせたのは社長の一言と祥子さんの少し震えた声だった。

「この件に関しては許可は出していなかったはずだったのでね。」
「この度は・・・勝手な真似をし、申し訳ございません。」

・・・許可は出してない?・・・でも祥子さんは確か・・・!!

祥子さんに冷たい視線を一瞬だけ送った社長が、今度は俺の方を向いた。

「私の許可も得ずにアカトキの名前を使って、しかも出演料も無しに、寄りによってLMEの学園の音楽祭に出演とは、一体どういうことかね?訳を聞こうか?不破君。」

訳・・・と聞かれ、俺の頭の中に浮かんだのは「キョーコに“俺”を見せ付ける為」だったが、社長を目の前にして、そんな訳など話せるはずも無く・・・。被った猫を見透かされているような気分になる。

「・・・・・・っ。」

今更だけど、幼稚な理由だった、それを思い知らされている感じだった。そんな俺の動揺を社長は見抜いていたのだろう、フン、と鼻で笑って口を開いた。

「まぁいい。今回の件は公にはなっていない。そう問題にすることでもないだろう。だが、公私混同の末に「不破尚」という歌手を安売りし、その評判を落としかねなかった責任は重い。二人には反省してもらわねばならん。」

最後まで顔色を変えなかった社長が次に口にした言葉は、・・・処分。その内容を聞いて、俺は自分のしたことをひどく後悔することになった。



「失礼しました。」

社長室を出て、祥子さんの方へ向き直る。

「・・・ごめん、祥子さん。俺・・・。」

少し悲しげな表情を見せた祥子さんだったが、すぐにマネージャーの顔になった。

「いいのよ。私のせいだから。・・・でも今度付く新しいマネージャーさんを困らせちゃダメよ?」
「・・・・・・ああ。」

社長の言った俺たちの処分内容・・・。

俺には厳重注意だけだったが、祥子さんは3ヶ月の停職処分に加えて、不破尚のマネージャーも降ろされた。その上、俺たちの同棲も解消するように言われ、俺はアカトキが所有するマンションに移ることになった。

「・・・引継ぎ作業が終わったら、急いであなたの荷物をまとめて送るから。数日はどこかホテルにでも滞在してなさいね。」

俺と祥子さんは恋人・・・という訳ではない。仕事上、常に一緒にいるから、その延長で一緒に暮らしているようなものだ。身体の関係はあっても、心までは関係していない、大人の関係。だから、同棲の解消を命じられても、俺たちの態度はあっさりとしたものだ。・・・あるのは罪悪感のみ・・・。

エレベーターで階下に向かう途中、祥子さんがクスっと笑った。

「何だよ?」
「いえね、尚、あなた洗濯も料理も掃除もしないでしょ?一人暮らしなんてできるのかしら?・・・と思ってね。」

・・・そういえば、そうだ・・・。

すっかり失念していた。一人暮らしの経験・・・そういえば俺には無かった。

・・・・・・。

「・・・キョーコに頼んでみるよ。」

俺がそう答えた瞬間、祥子さんの冷たい声が聞こえた。

「尚、それはダメ。尚には悪いけど、キョーコさんはもう諦めなさい。」
「はぁ?何でだよ?あいつは俺の幼馴染で、俺の言うことは何でも―――!」

俺の最後の言葉は祥子さんの視線で止められた。それは俺を哀れむような、視線。

「キョーコさんはもうあなたの所には戻らないわ。尚、早く気付いて・・・。もう手遅れなのよ。」


・・・手遅れ?・・・違う!

・・・あいつは昔から俺のことだけを見ていた。

・・・あいつにとっては俺が全てなんだ!それは今でも・・・!


そう思って、気が付くと、俺はLME学園初等部の正門前に立っていた。

午後5時を回り、児童はいないし、陽も落ちかけて行き交う人も俺にはそうそう気付かないだろう。

と、そこへ、真っ赤なポルシェが正門近くにやってきて停まった。俺はまだ運転免許を持っていないから、この際免許を取って、そのポルシェのような良い車を買おう・・・。ポルシェを見ながらボーっとそんなことを考えていたところに、見覚えのある明るい髪色の女性がポルシェに近づき、助手席のドアをノックしていた。


・・・あれは・・・キョーコ!?


見たこともないような笑顔で助手席のドアを開けるキョーコ。どうやってそこまで駆けつけたのか記憶は無い。ただ、キョーコ!と叫んだ瞬間、俺はキョーコの腕を掴んでいた。

「松太郎!?どうしてここに!!??」

そこには、目を丸くさせて驚いているキョーコと、いつかどこかで見た気に食わない男がいた・・・。




◆◇◆◇◆



エレベーター (22)


(Side キョーコ)

―――朝、敦賀さんの腕の中で目が覚めて・・・

―――温かいまどろみの中、甘い時間を過ごして・・・

―――(食材が無かったので私の部屋に移動して)二人で朝食を取って・・・

・・・そして、初等部に着いて車から出た時、敦賀さんに言われたの・・・


「俺の家で一緒に暮らさないか?」


って。

あまりの嬉しさに声を出せないでいると、「考えといて?」とだけ言って、敦賀さんは車を出した。考えといて・・・って言われても、私はYES以外の答えを知らない。敦賀さんとずーっと一緒にいられるなんて、まるで夢のよう・・・。赤いポルシェが見えなくなるまで、ポーっとしていた。

その後、学校内でもポーっとしていて、敦賀さんと同棲し始めたら・・・と考えては、顔が緩んでしまうのを抑えるのに必死だった。

・・・ど、同棲だなんて・・・なんだか響きが・・・大人・・・。

同棲・・・ってことは、朝一緒に起きて、仕事に行って、一緒に帰宅して、一緒にご飯作って食べて、一緒に・・・ぁー・・・寝て・・・、それでもって休日もずーっと一緒・・・ってことよね・・・。ど、どうしよう!それってすごく嬉しいかも!!

仕事が早めに終わって、いつも通り敦賀さんに電話する。車に乗ったら、同棲の返事をしよう、そう決めていた。敦賀さん、喜んでくれるかな・・・なんて、またポーっと考えながら正門に向かっていた。それからすぐに敦賀さんの車が現れて、彼の車に駆け寄って、彼の優しい顔を見て、ドアに手をかけた。そこまではいつもと同じ・・・。でも・・・


「ショータロー!?なななんであんたがここに!?」


急に掴まれた右の手首が痛く、それに思わぬ人物の登場で、私は一瞬パニックになりかけた。

・・・なんでコイツがここにいるの!?仕事は!?・・・もしかしてまた待ち伏せされてた!?

パニックから少し冷静になった頭の中で、今度は怒りが湧き上がり始めた。・・・でも初めて見る、ショータローのひどく真剣で怒ったような顔を見て、右手をすぐに振りほどけなかった。

「・・・ちょっと来い。」

私を見ることもなく、ズンズンと逆方向に歩き出そうとするショータローにカッとなって文句を言おうとした瞬間、冷たい空気と共に冷たい声が背後から聞こえてきた。

「ちょっと待ってくれる?不破君。勝手に人の彼女を連れて行かないでもらいたいな。」

いつの間に車から出たのか、敦賀さんが腕を組んで車にもたれていた。その態度と顔は余裕たっぷりという感じで、でも、その笑顔は明らかに友好的なものではない・・・と久しぶりに嬉しそうに暴れる怨キョを通じて感じられた。

・・・敦賀さん、お、お、怒ってる・・・

すると、その敦賀さんの言葉に、未だ私の右手首を掴んだままのショータローが、すごい勢いで振り向いた。

「・・・彼女・・・だと??」
「そうだけど?」

相変わらず余裕の笑みで答える敦賀さん。すぐにショータローがこちらを向いた。

「・・・コイツ、お前の彼氏なのか?」
「そ、そうよ!」

そう叫んで、私の右手首を掴んでいたショータローの手の力が緩んだ瞬間、私は自分の手首を勢いよく取り戻した。その途端、後ろから長い腕に絡まれる。

「で?君はキョーコに何の用?」

私を囲うように、ショータローから守るように、敦賀さんが片腕だけで抱きしめてくれた。

・・・こ、こういうの、まだドキドキする・・・

勤務先前ということも、ショータローの前だということも忘れてしまいそうになっていた私は、ショータローが顔を歪ませていたことに気が付いてはいなかった。

「・・・俺は・・・俺はそいつに用があるんだ。お前には関係ない。」
「関係あるよ?キョーコの彼氏だしね。・・・君のことだ、どうせキョーコにまた家政婦になるように頼みに来たんじゃないのか?・・・もしくはそれ以上を望みに・・・?」
「・・・・!?」

自分の頭の上でバチバチと火花が散っている気がする。。。それに暗くなってきたとはいえ、さすがに人の目を集め始めた・・・!こ、これは早いとこ収拾させなくては・・!

「うるせぇ!これは幼馴染にしかわかんねぇことなんだよ。」

そう、早くこの場を去らなければ・・・と思うのに、そのショータローの言葉に、私は妙に冷静になった。散々尽くさせた挙句、自分から私のもとを去っておいて、連絡もよこさないで、それで自分の不都合ができたから再び私のもとに戻ってきた目の前の男・・・。

「・・・幼馴染・・・ですって?」
「・・・何だよ?」
「あんたと幼馴染だなんて、私はもう懲り懲り。幼馴染という名前を私に被せて、また昔みたいに私を都合よく使えると思ったら大間違いよ!」

ショータローの顔がショックを表している。でも、ここで同情して引いちゃダメ!敦賀さんとも言っていたもの。逃げてばかりじゃダメだって・・・いつか決着つけなきゃいけないって・・・。なぜか私を家政婦としてまたこき使おうとしているショータロー。それはもうできない。だって、私にはもう・・・。それを伝えなきゃいけない。彼に分からせないといけない。

・・・そして、今が、きっと、その時・・・。

「ショー、私は今、私の人生を歩んでるわ。そしてそれはあんたには関係ない。あんたの人生も私には関係ない。あんたしか見えてなかったキョーコはもういないの。」

ショックを隠しきれないショータローが辛そうに顔を背けた。そんな顔も・・・初めて見る・・・。

「・・・お前は俺との幼馴染の縁も切るつもりなのか・・・?」
「あんたが今のままなら遠慮なく切らせてもらうわ。」

その後しばらくショータローは下を向いたままだった。・・・そして、敦賀さんはずっと私の肩を静かに抱いてくれていた。なりゆきを見守るように・・・。私に勇気をくれるみたいに・・・。


「・・・分かったよ。」


そう呟いたショータローがやっと顔を上げた。少しだけどいつもの俺様なショータローの顔に戻ったようだった。

「何だかんだいっても10数年以上の付き合いだ・・・。幼馴染の縁だけは切られたくないから・・・な。」
「ショー・・・」
「心配すんな。もういい。もうお前に俺が必要じゃないのは分かったから・・・。でも、後悔しても知らねぇから。俺は芸能界のトップに立つ男なんだ。そんな男と縁を切ろうとしたこと、後悔させてやんよ。」

それは・・・昔のショータローの口調だった。強気で、勝気で、自信満々で・・・。だから私も負けじと言ってやった。

「やってごらんなさいよ!」

その後、フンと鼻をならしたショータローは、敦賀さんに何か言いたげな視線を送って、私達に背を向けた。



「はい、ミルクティー。」
「あ、ありがとうございます。」

コーヒーを持った敦賀さんがポスンと私の隣に座る。

「今日は・・・頑張ったね。」

何を・・・と聞かれなくても分かる。

「あれで・・・良かったんでしょうか・・・。ちょっとキツイことを言い過ぎたような気がして・・・」
「キョーコは優しいね。でも、あれで良かったと思うよ。厳しい言葉でも、十分君の優しさは伝わってたと思う。」

そう言いながら敦賀さんが私の頭を撫でた。・・・安心。どうしてこの人は、私をこんなにも安心させてくれるんだろう・・・。隣に座る敦賀さんをじっと見つめていると、コーヒー味のキスが振ってきた。

「それで・・・キョーコ・・・。」
「はい?」
「今朝の返事を聞きたいんだけど?」

・・・あっ!そうだった!それを伝えようとしてたんだ!


「あ、あの・・・で、では、合鍵をいただけますか?」


良かった!と言って、敦賀さんは私を抱きしめた。耳元で、嬉しい、とか、好きだよ、とか囁かれて、私も心満たされるような気持ちになって、敦賀さんを思いっきり抱きしめた。

「断られたら格好悪くなるところだったよ。だって、ほら・・・。」

そう言って敦賀さんはピンク色の封筒をポケットから出して、私に見せてくれた。



中には・・・キョーコの名前が入ったオリジナルの合鍵・・・。

しかもピンク色だった。

それに感激してウルウルしてきた私に、敦賀さんがまた囁く・・・。


「引越しはいつにしようか?」



第一部 -完-
作:ミス・ルイーザ様



月華です。
いかがでしたか?
この続き気になりますよね?
もうラストが近い気がしますね。
しかし、残念な事にミス・ルイーザ様が書かれるこのお話しは、ここまでなんです。
すごく残念です。
ご本人のブログでのお知らせでブログは閉鎖する事、短編や完結済みの作品はフリーとされるとの事、未完のお話しも続きを書きたいという方がいれば自由に持って帰ってよしとの事でした。
そこで、アホ犬月華、挙手。
無謀にもチャレンジを……。
だって勿体無いじゃないですか!!
でも書くのにはちょっと迷いましたね。
お読みの通り、もうラストも近い感じがしますよね?
しかし、貰っておいてすぐ終らせるって……それってなんかいい加減な感じしない??とか考えたり、エレベーターという基本ネタをドコにどう持っていくかとか考えたり、自分が書く蓮やキョコとのギャップに悩んだりしたわけです。
人様のネタですからね。
いい加減には扱えません。
好きで読んでいらした方にも申し訳ないことはしたくなくて、時間がかかりました。
自分なりに「だらだら書かない」「ギャップはなるべく埋める」「基本(テーマ)はぶれないようにする」「不自然ではないように心がける」「おかしな事はなるべくやらない(自信がないから”なるべく”苦笑。)」とお約束事をいくつか定め現在執筆中です。
ちょっとがんばってみます。
本当にお待たせしてすいません。

一応区切りは必要かと思いましたので、ミス・ルイーザ様のお話を第一部とさせていただきます。
続きは第二部として月華が書きます。
こんな私の駄作でもよろしければ、続きとしてお読みいただければ幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。



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