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CROSSING LOVE 7

敦賀さんが美容師さんの次の土曜日に予約が取れたと言ってきた。
敦賀さんは最近、凄く機嫌がいい。
今日だって凶器みたいなキラキラの破片を飛ばしながら、微笑んでいる。
「その日は一日かかるからね。」
「一日?」
「そう。朝早いよ。寝坊しないでね。」
「貴方が無茶しなければ、何時だって起きれます。……髪を切ったり、メイクするだけじゃないんですか?」
「すごく綺麗にして貰うんだよ。」
「すごく綺麗にですか?」
「だから楽しみにしていて。トップクラスの芸能人御用達の腕っこきの美容師だよ。」
夢みたい。
ろくに化粧なんかした事がなかったし、メイクまでしてくれると聞き、私の心は浮かれていた。
もっと話しを聞きたかったのに、敦賀さんは、それ以上は何も答えてはくれない。
”当日まで内緒”とか言うし、連日エステに通わされるし、……もう何がなんだか……。



あっという間に日は過ぎて……当日。
日が昇る前にマンションを出て、車で都心を離れる。
辿り着いた先は………。
「敦賀さん、ここって……。」
「秋にオープンする結婚式場だよ。今はまだ準備中で……あちこち工事入ってるけどね。」
「……でどうして、ここに?……あ……お手伝いですね。」
「カタログ用の写真撮影のモデルになるんだよ。」
「敦賀さんがですか?」
「君もね。」
「へっ!?」
「ここのオーナーも美容師の人も父と母の知り合いなんだ。俺の事も知っててね。それでモデルを頼まれたんだよ。俺、素人だし、断ってたんだけど………キョーコと一緒ならいいかと思って引き受けた。」
「ええっ!?無理ですよ!敦賀さんはともかく、私は地味で…」
「はい。ストップ!君がそんな事ばっかり言うからだよ。少しは自信持って貰おうと……。」
「無茶です。これお仕事なんですよ。中途半端な気持ちじゃスタッフの方々に申し訳……」
「本気でやればいいだろ。本当に俺と式を挙げてるつもりでやればいい。」
「敦賀さん……。」
「なんなら……これが終わったら役所に行って手続きしようか?」
「何を言って……。」
「俺、本気だけど?」
「〜〜っ!わっわかりましたっ!!もうっ!!貴方に嫁ぐつもりでやりますっ!!」
「いや、ホントに嫁いでほしいんだけど……。」
社さんにはよく、ヘタ蓮と言われていた敦賀さんだけど……最近では変なところで強引なところがある。
こんな人だったなんて……と思う時もあるけど、付き合って初めて知る事がたくさんで、新しい一面を知る度に嬉しくなる。
私しか知らない敦賀さんが増えていく。
そしてまた、彼を好きになる。



建物に入り、通りかかったスタッフに声をかけると中に案内してくれた。
「モデルさんが到着しましたぁ。」
「千織ちゃん、ありがとう。すぐ始めるから準備してて。蓮ちゃーん。待ってたわぁ〜〜っ!!」
小柄な女性がかけてくる。
「よかったわぁ。引き受けてくれて。どうしても蓮ちゃん使いたくて。…で…彼女が蓮ちゃんの?」
「はい。大切な彼女ですよ。」
「はじめまして。最上キョーコと申します。今日はよろしくお願いします。」
「あらぁ、美少女じゃないのっ!!期待以上だわっ!!」
「……ミス・ジェリー……彼女、俺と同い年ですよ。」
敦賀さん………その紹介の仕方は酷いです………。
童顔の私……いつも未成年と間違われ、補導されそうになった事もある悲しい事実。
「はじめましてキョーコさん。私が、貴方々のメイクを担当する美容師よ。私の事はテンって呼んでね。」
小柄なテンさん……だけど、すごくパワーがあった。
私達の他にもモデルさんが2組いて、準備が着々と進んでいく。
テンさんの手が動く度に美しさが増していく。
まさに魔法使いか神のようなその。
完成した花嫁さんはすごく綺麗だった。
そして次は私の番。
「いろんなパターンで撮るから忙しいわよ。」
大きな鏡の前。
「綺麗な髪ねぇ。枝毛一つないわ〜。ホントに髪切っちゃっていいの?」
「はい。」
「そう……じゃあなたに似合ったヘアスタイルにして上げるわ。髪の色も時間が出来たら、少し明るくしましょ。」
そこから始まったのは夢みたいなキラキラと輝いた世界。
メイクされた私はまるで別人みたいで……。
新郎姿の敦賀さんの前に立つ。
少しは……貴方に見合った女性になれてるかな……凄く不安。
「敦賀さん。どうですか?」
「…………。」
「敦賀さん?」
「困るよ……。」
「えっ?」
やっぱりダメだったかしら……。
「凄く困る。……君にこれ以上、綺麗になられると困るんだ。これ以上、俺を虜にしてどうする気。今すぐマンションに連れ帰りたいよ。いや、二人きりになれるとこならどこでもいいかな。」
なんて、何を言い出すの〜。
最近……大人の事情も身にしみる程に理解してしまった私。
二人きりになったらどうなるか……。
「蓮ちゃん。気持ちはわかるけど、最後まで我慢してね。」
テンさんにまでばれていた。



早朝と言えど夏。
日が高くなる度に暑さが増す。
ものすごく暑かったけど……ステキなドレスをたくさん着れて、憧れだったお姫様メイクもしてもらって、隣には素敵な王子様がいて……すごく幸せだった。

緑に囲まれたチャペルで敦賀さんと、指輪の交換。
白い階段の上でチャペルをバックにキスを交わす。
ガーデンウェディングもステキなだった。
花を敷き詰めたバージンロード、バックは天使が祝福の笛を鳴らす真っ白な噴水。
透き通った清らかな水が、太陽の光を取り込みながら綺麗な弧を画いて落ちていく。
その前で敦賀さんと向き合ってポーズをとったり、敦賀さんにお姫様抱っこして貰ったり。
そして、今日、何度目かのカメラマンさんのリクエスト…敦賀さんとのキスも。
今日、何回キスしたかな。
恥ずかしい。

カメラマンさんがいうには、恥じらう姿が初々しくていいんだとか。



青空の下にセットされたテーブルに豪華な料理や花やキャンドルが美しさを計算しつくされた配置に並べられ、幾人かの招待客に扮したエキストラが配置に着く中でのキャンドルサービス。
場所を再びチャペルの前に移動して招待客にまいた薔薇の花びらが舞う中で……また……キスをした。
敦賀さんは、恥ずかしくないのかしら?



午後は日差しがかなりきつくなり、屋内での撮影になる。
主にドレスの撮影。
三組のカップルが入れ代わり立ち代わり撮影をしても、それでも忙しかった。

ドレスを変える度にテンさんが魔法のように腕をふるい……メイクも髪型変えていく。
私は姿を変える度に、大好きな彼の花嫁に生まれ変わる。



「キョーコ……疲れたかい?」
「でも……楽しいですよ。

「俺も……。」

出番を待つ間、窓辺で二人微笑み合う。
気づけば、また……唇は重なっていた。



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