CROSSING LOVE おまけ

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CROSSING LOVE 7

敦賀さんが美容師さんの次の土曜日に予約が取れたと言ってきた。
敦賀さんは最近、凄く機嫌がいい。
今日だって凶器みたいなキラキラの破片を飛ばしながら、微笑んでいる。
「その日は一日かかるからね。」
「一日?」
「そう。朝早いよ。寝坊しないでね。」
「貴方が無茶しなければ、何時だって起きれます。……髪を切ったり、メイクするだけじゃないんですか?」
「すごく綺麗にして貰うんだよ。」
「すごく綺麗にですか?」
「だから楽しみにしていて。トップクラスの芸能人御用達の腕っこきの美容師だよ。」
夢みたい。
ろくに化粧なんかした事がなかったし、メイクまでしてくれると聞き、私の心は浮かれていた。
もっと話しを聞きたかったのに、敦賀さんは、それ以上は何も答えてはくれない。
”当日まで内緒”とか言うし、連日エステに通わされるし、……もう何がなんだか……。



あっという間に日は過ぎて……当日。
日が昇る前にマンションを出て、車で都心を離れる。
辿り着いた先は………。
「敦賀さん、ここって……。」
「秋にオープンする結婚式場だよ。今はまだ準備中で……あちこち工事入ってるけどね。」
「……でどうして、ここに?……あ……お手伝いですね。」
「カタログ用の写真撮影のモデルになるんだよ。」
「敦賀さんがですか?」
「君もね。」
「へっ!?」
「ここのオーナーも美容師の人も父と母の知り合いなんだ。俺の事も知っててね。それでモデルを頼まれたんだよ。俺、素人だし、断ってたんだけど………キョーコと一緒ならいいかと思って引き受けた。」
「ええっ!?無理ですよ!敦賀さんはともかく、私は地味で…」
「はい。ストップ!君がそんな事ばっかり言うからだよ。少しは自信持って貰おうと……。」
「無茶です。これお仕事なんですよ。中途半端な気持ちじゃスタッフの方々に申し訳……」
「本気でやればいいだろ。本当に俺と式を挙げてるつもりでやればいい。」
「敦賀さん……。」
「なんなら……これが終わったら役所に行って手続きしようか?」
「何を言って……。」
「俺、本気だけど?」
「〜〜っ!わっわかりましたっ!!もうっ!!貴方に嫁ぐつもりでやりますっ!!」
「いや、ホントに嫁いでほしいんだけど……。」
社さんにはよく、ヘタ蓮と言われていた敦賀さんだけど……最近では変なところで強引なところがある。
こんな人だったなんて……と思う時もあるけど、付き合って初めて知る事がたくさんで、新しい一面を知る度に嬉しくなる。
私しか知らない敦賀さんが増えていく。
そしてまた、彼を好きになる。



建物に入り、通りかかったスタッフに声をかけると中に案内してくれた。
「モデルさんが到着しましたぁ。」
「千織ちゃん、ありがとう。すぐ始めるから準備してて。蓮ちゃーん。待ってたわぁ〜〜っ!!」
小柄な女性がかけてくる。
「よかったわぁ。引き受けてくれて。どうしても蓮ちゃん使いたくて。…で…彼女が蓮ちゃんの?」
「はい。大切な彼女ですよ。」
「はじめまして。最上キョーコと申します。今日はよろしくお願いします。」
「あらぁ、美少女じゃないのっ!!期待以上だわっ!!」
「……ミス・ジェリー……彼女、俺と同い年ですよ。」
敦賀さん………その紹介の仕方は酷いです………。
童顔の私……いつも未成年と間違われ、補導されそうになった事もある悲しい事実。
「はじめましてキョーコさん。私が、貴方々のメイクを担当する美容師よ。私の事はテンって呼んでね。」
小柄なテンさん……だけど、すごくパワーがあった。
私達の他にもモデルさんが2組いて、準備が着々と進んでいく。
テンさんの手が動く度に美しさが増していく。
まさに魔法使いか神のようなその。
完成した花嫁さんはすごく綺麗だった。
そして次は私の番。
「いろんなパターンで撮るから忙しいわよ。」
大きな鏡の前。
「綺麗な髪ねぇ。枝毛一つないわ〜。ホントに髪切っちゃっていいの?」
「はい。」
「そう……じゃあなたに似合ったヘアスタイルにして上げるわ。髪の色も時間が出来たら、少し明るくしましょ。」
そこから始まったのは夢みたいなキラキラと輝いた世界。
メイクされた私はまるで別人みたいで……。
新郎姿の敦賀さんの前に立つ。
少しは……貴方に見合った女性になれてるかな……凄く不安。
「敦賀さん。どうですか?」
「…………。」
「敦賀さん?」
「困るよ……。」
「えっ?」
やっぱりダメだったかしら……。
「凄く困る。……君にこれ以上、綺麗になられると困るんだ。これ以上、俺を虜にしてどうする気。今すぐマンションに連れ帰りたいよ。いや、二人きりになれるとこならどこでもいいかな。」
なんて、何を言い出すの〜。
最近……大人の事情も身にしみる程に理解してしまった私。
二人きりになったらどうなるか……。
「蓮ちゃん。気持ちはわかるけど、最後まで我慢してね。」
テンさんにまでばれていた。



早朝と言えど夏。
日が高くなる度に暑さが増す。
ものすごく暑かったけど……ステキなドレスをたくさん着れて、憧れだったお姫様メイクもしてもらって、隣には素敵な王子様がいて……すごく幸せだった。

緑に囲まれたチャペルで敦賀さんと、指輪の交換。
白い階段の上でチャペルをバックにキスを交わす。
ガーデンウェディングもステキなだった。
花を敷き詰めたバージンロード、バックは天使が祝福の笛を鳴らす真っ白な噴水。
透き通った清らかな水が、太陽の光を取り込みながら綺麗な弧を画いて落ちていく。
その前で敦賀さんと向き合ってポーズをとったり、敦賀さんにお姫様抱っこして貰ったり。
そして、今日、何度目かのカメラマンさんのリクエスト…敦賀さんとのキスも。
今日、何回キスしたかな。
恥ずかしい。

カメラマンさんがいうには、恥じらう姿が初々しくていいんだとか。



青空の下にセットされたテーブルに豪華な料理や花やキャンドルが美しさを計算しつくされた配置に並べられ、幾人かの招待客に扮したエキストラが配置に着く中でのキャンドルサービス。
場所を再びチャペルの前に移動して招待客にまいた薔薇の花びらが舞う中で……また……キスをした。
敦賀さんは、恥ずかしくないのかしら?



午後は日差しがかなりきつくなり、屋内での撮影になる。
主にドレスの撮影。
三組のカップルが入れ代わり立ち代わり撮影をしても、それでも忙しかった。

ドレスを変える度にテンさんが魔法のように腕をふるい……メイクも髪型変えていく。
私は姿を変える度に、大好きな彼の花嫁に生まれ変わる。



「キョーコ……疲れたかい?」
「でも……楽しいですよ。

「俺も……。」

出番を待つ間、窓辺で二人微笑み合う。
気づけば、また……唇は重なっていた。



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Crossing Love 6

「もう……恋なんてしない。」
分かっていた事なのに……。
「もう、誰も好きなんて………。」
流れる涙は、壊れた心のカケラ。
二度と元に戻らない壊れた心。
二度と人を好きになんてならない。
もう、これ以上、傷付きたくないから。
そして何よりもツライと思ったのは別の事。
ショーちゃんにフラれた事よりも恋をしないと決めた事が辛いのは……何故?
どうして、あの人の顔が浮かぶの?
どうしてっ!?



その時、後ろから誰かに抱きしめられた。
この香り。
敦賀さんだ。
「ダメ。そんな事させないよ。」
崩れ折れてしまいそうな体を敦賀さんが抱き留めてくれる。
「恋をしないなんて言わないで。俺を見て。」
「………。」
「君が恋する気持ちを忘れてしまったら、俺はどうすればいいの?」
……敦賀さん。
「ねぇ。俺を見てよ。絶対に君を悲しませたりしないから。」
今、やっと気付いた。
私はもう次の恋をしていた。
さっき恋をしないと心に鍵をかけようとしたのは……敦賀さんの側にいたかったから。
友人としてでも構わないから側にいたかったから。
だから私は………。
私の本当の気持ちは………。

「敦賀さん。……私、貴方が好きです。」

それが私の本当の気持ち。
私の中には既にショーちゃんはどこにもいない。
貴方に出会って、貴方の優しさに触れて……本当の恋に目覚めたの。
あの時の出会いは、平行線のままだった私達の関係がクロスした瞬間。
その時にはもう新しい恋が始まっていたんだ。
「俺が好きって……それ、本当?」
どこまでも優しい声に頷いた。
くるりと身体を反転させられて敦賀さんと向き合う。
敦賀さんの手が頬に添えられて……続くキスの予感に……ゆっくりと瞳を閉じた。



「よし。これで最後。」
最後の荷物を段ボールに詰め込んで、周りを見渡す。
「以外にも広かったのね。この部屋。」
私は上京してから、お世話になっていたアパートを引き払う事にした。
引っ越し先はまだ決まっていなくて……見付かるまでの間……敦賀さんのマンションにお世話になる事に。
2年住んで、それなりに増えた荷物。
その中には私の物ではないものもあって、手伝ってくれた敦賀さんには不機嫌な顔で「これ……捨ててもいい?」と見つかる度に言われた。
これ以上、彼にショーちゃんの荷物を発掘されては面倒なので、無造作だろうが何だろうが、見つけては手当たり次第に段ボールに突っ込んだ。
二つずつあった食器も全部処分して、空の棚が残るだけ。
そうこうしているうちにリサイクルショップの人が家具を引き取りに来た。
食器棚の他にもこたつやベッドやたんす、他にもいろいろと引き取ってくれた。
引き取って貰えなかった物は後日、ゴミとして処分する。
「キョーコ。荷物、詰めるだけ積んだよ。」
彼に車を出して貰い荷物を彼のマンションへ運び込む。
引っ越しには向かない車だけど……あまり目立ちたくはないから、好都合だったかも。
向かうは彼のマンション。
初めてお邪魔した時は『高級マンションの最上階っ!?しかもワンフロアァ!?そこに学生が一人暮らし……。』と驚いた。
「賃貸じゃないよ。去年までは家族で住んでたんだけど、今両親は海外赴任中でね。後数年は帰っこないよ。あっ……君が、ここに住む事も了解をとってあるから大丈夫だよ。」
との事……。
「確かに……学生にしては贅沢だよね。車も父のだしね。……食費くらいはバイトで稼いでるよ。」
そんなところが敦賀さんらしい。



「荷物、少なかったから。後一往復くらいで済みそうだね。まだ明るいけど……どうする?」
「あの……立ち寄りたい所があるんですが、お付き合い頂けますか?……それと美容院にも行きたいので……。」
「いいよ。美容院も付き合ってあげる。知り合いに腕のいい人がいるから紹介するよ。」
「敦賀さん……もの凄く……高いんじゃないんですか?」
「普通ならね。ただし条件があってね。それを引き受ければ、ただになるよ。」
「ただ?」
「うん。俺もキョーコとならやってもいい……いや、キョーコとやってみたいと思ってね。しかもね、逆にお金が入るよ。」
「そんなうまい話しが……。」
「俺の言う事でも信じない。」
「………。」
「というわけで美容院は日を改めて行こうね。」
丸め込まれた感があるけれど、彼に任せる事にした。



「失礼します。」
訪れたのは安芸先生の研究室。
「あら?あなたは?」
「最上キョーコと申します。」
「え?……あ……。私に用?」
「はい。私、アパートを引き払いまして。ショーちゃんの荷物が残っていたので持ってまいりました。」
「えっ?」
「失礼します。安芸先生。敦賀といいます。これが不破君の荷物です。置くのここでいいですか?」
衣類やら、靴やら、楽譜やら、残っていた物を詰め込んだ段ボールが2つ。
ぎゅうぎゅうに詰め込んだから見た目より重くて、ここまで運んでくれたのは敦賀さんだ。
「用件は、これだけですので、私達はこれで失礼します。」
困惑した顔の安芸先生。
いきなり持って来られたらそうよね。
でも、持っていたくなかったし、仕方が無いわ。
敦賀さんの部屋に戻ってすぐに、ショーちゃんから電話が来たけど……出なかった。
だってキスの途中だったから。
しばらくして、また鳴りはじめる携帯……。
「しつこいな。」
鳴り止まない私の携帯を手に取り……電源を切ってしまった。
「携帯……変えようね。」
「はい。」
また、唇がゆっくりと降りて来る。
甘い時間邪魔する音はもう聞こえない。



「敦賀さんの嘘つき。」
「ん?」
「がっつかないって言ったくせに……。」
私は敦賀さんのベッドで敦賀さんの腕に抱かれていた。
「ごめん。君が可愛すぎて、がまん出来なかった。俺がフラれる理由はがっつくからじゃないって事も分かったよ。」
「……?」
「理由簡単……相手が君じゃなかったから。」
「………。」
「今まで本当の意味で好きになった事はなかったんだ。君を好きになって……やっと気が付いたよ。」
「敦賀さん。」
「出会った時には君に惹かれてた。でも、君には不破がいて……、君を忘れる為に他の誰かを思おうとしていたのかもしれない。彼女達にはバレてた訳だ。酷い男だよね。不破の事は言えないよ。」
「……酷いですよ?彼女達本当に敦賀さんの事、好きだったはずなのに。」
「うん。反省してます。これからは……本気で向き合うよ。本気で好きになった君だから。だから……もう一回いい?」
ぎゅっと強く抱きしめられて……。
「キョーコ。」
耳元で名前を響くように熱く囁かれて……。
「〜〜〜っ!!」
ゾクリとした。
「待って……待って!!敦賀さんっ!!」
敦賀さんの胸を手で押して距離を取る。
意外にも抱きしめる腕は緩み………ホッとしたところに新たな爆弾が投下された。
「何?ダメ?」
敦賀さんの顔が私の顔を覗き込む。
「〜〜〜っ!!」
そんな……風に見つめないで〜〜っ!!
捨てられた子犬みたいな目で私を見る敦賀さん。
こんなでっかい子犬がいるもんですか〜〜っ!!
「……大型犬にだって、子犬だった頃はあるよ。」
どうやら声に出ていたらしい。
「あなたは立派に成人でしょう!!」
「そうだね。さっきも証明して見せたけど。」
彼の言わんとしている事が分かってしまい……顔は火を吹きな程に熱くなる。
「キョーコ……ダメ?」
私…………とんでもない人の彼女になってしまったのかもしれない。
それでも……最後の抵抗を試みる。
「……お腹……空きました。」
彼はクスリと笑って。
「OK。じゃ、ごはん食べたら………またね?」
取って付けたような疑問符は本来の意味を持たず、私の運命は彼に翻弄される事を宣言されていた。



何度かショーちゃんに待ち伏せされて、その度に敦賀さんが追い払ってくれる日々が続いた。
私に何の用なのかしら。
安芸先生というステキな彼女がいるのに、”お前は俺のもんだ”とか言うのは……どうかと思うの。
いくら下僕扱いしているだけにしても……勝手過ぎるわよ。
「ショーちゃん。もう少し大人にならないと安芸先生に捨てられちゃうわよ?いくら幼なじみでも、いつまでも私があなたの面倒見てたらおかしいでしょ?」
去り際にそう言ったら、敦賀さんは何かを必死に堪えるような顔をして、ショーちゃんは口をあんぐりあけて固まっていた。
私……何か、おかしな事言ったかしら?
固まったままのショーちゃんをその場に残し、私と敦賀さんは帰路に着く。



敦賀さんが盛大に吹き出し笑いをしたのは、完全にショーちゃんの姿が見えなくなってからの事。





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Crossing Love 5

眠気を誘う助教授の声が講義終了を告げ、今日最初の1コマが終わった。
そこへ眠気を吹っ飛ばす声がかかる。
「るぇ〜ん。むぅ〜ふぅ〜ふぅ〜。」
そこに社さんが不気味な笑いを携えてやって来た。
既にニヤニヤなんて領域じゃない。
「何ですか。……その”ドラえもん”みたいな笑いは……。」
「………お前の口から”ドラえもん”って言葉がとび出すとは思わなかったよ。」
「失礼ですね。俺だって知ってますよ。この国で21年間生きてるんですから。」
「そりゃそうだ。……それよりもお前!昨日、キョーコちゃんとデートしてただろっ!!見たぞ〜。」
途端に周囲がざわついた。
「ちょっ……何言い出すんですかっ!?……最上さんにはちょっと相談にのって貰っていただけですよっ!!」
何故か周りのざわつきも幾分おさまる。
「いつものかよ。なーんだ。……ついに付き合いだしたかと思ったのになぁ。」
本当に誰がどこで見ているかわからないもんだ。
「違うのか……。すげぇ楽しそうに歩いてたから、俺はてっきり。」
迂闊な事はするもんじゃない。
彼女の頬にキスしたところを見られたのではなくて良かったと思った。
社さんの話しはそこで終わるのかと思ったが、今度は複雑な顔をして話しを続けた。
「そか……違うのか……。キョーコちゃんもこれで不破から解放されたのかと思ったのになぁ……。キョーコちゃん、かわいそうだよなぁ。お前、何とかしてやれよ。」
かわいそうって何がだ?
彼女がどうかしたのか?
「それ……どういう意味ですか!?不破から解放って。」
「えっ?お前、キョーコちゃんから相談とかされないのか!?……あ……聞かされてたら何とかしてるかぁ。好きなおん……」
……聞いてない。
何も……。
昨日、彼女は何か悩みある感じだった。
それが不破の事??
不破が彼女に何かしてる!?
「おいっ!蓮。聞い……。」
「社さんっ!!」
「なんだっ!?」
「あなたが知ってる事を全部話して下さいっ!!」
「だから今話して……。」
「ここじゃ話せない事も知ってるんでしょ!全部話して貰いますよ!!」
次は調度休講。
俺は社さんを引きずって、室外に出た。
大学のそばにあるカフェで席につくやいなやコーヒー二つ注文し、店員を追い払う。
一分一秒も惜しい。
社さんはそんな俺に呆れ半分で知っている事を話してくれた。
社さんから聞かされた内容に唖然とする。
「お前周りに興味なかったもんな〜。」
最上さんは何故、俺に相談してくれなかったんだろう。
俺はどうして、周りに気をつけておかなかったんだろう。
最上さんと仲良くなったのは噂が蔓延して、珍しくも何とも無くなって、何かあっても”またか…”と、誰も口にすら出されなくなった後だったとしても………どうして、俺は………。
彼女の事なのに。
「……なあ、蓮。このままじゃキョーコちゃん不幸になるだけだぞ。都合のいい時だけ、いいように使われてさ。そのうち取り返しのつかない事になるぞ。お前、キョーコちゃんの事どう思ってんだ?好きならさぁ……不破から奪っちまえよ。俺が見た限りじゃ……キョーコちゃんだってお前の事意識してるって。いい加減ヘタ蓮卒業しろよ。」
「…………。」
「いい事を教えてやるよ。キョーコちゃん……今校内にいるぞ。都合よくあっちも休講になったらしい。……今朝ばったりあったから、直接聞いた。」
気が付いたら……カフェを飛び出していた。



彼女が行きそうな場所を探し回る。
校内は広いが、彼女が行きそうな場所はだいたい把握していた。
彼女の親友の琴南さんを見掛けて声をかける。
「琴南さん!最上さん知らない?最上さんは一緒じゃないのっ!?」
「敦賀さん、どうしたんですか?そんなに慌てて。……キョーコならレポート提出しに椹教授のとこ……。」
「ありがとうっ!」
彼女に会いたい。
今すぐに抱きしめたい。



椹教授の研究室に向かう途中で最上さんの姿を見つけた。
彼女は立ち尽くしていた。
足元にはレポートとおぼしき物が散らばっている。
近づくと話し声が聞こえた。
専攻が違うから世話になった事はないが確か講師の安芸先生の研究室だ。



「彼女の方は大丈夫なの?」
「彼女ってキョーコ?……アイツは彼女じゃねーよ。何度も言ってんじゃん。アイツ地味でつまんねーし、痩せっぽちで胸はねーし、あんなガキは好みじゃねぇよ。」
「同棲してて、それはないんじゃない?ヒドイ男ね。」
「同棲じゃねーよ。……いいとこ家政婦だな。……それよりも、さぁ、アイツ、男と帰ってきたんだぜ……俺の事好きだとか何とか言ってるくせにさぁ……慰めてよ、祥子さん。」
「先生って呼びなさい。ここではね。」



その会話に俺も……思わず、言葉を無くす。
そして俺のせいでもあったのを知り、俺は………。
彼女になんて言えばいいんだろう。
何も思いつかない。



最上さんは、すぐ後ろにいる俺の存在に気付いていないのか……身動き一つせずに、僅かに開いたドアを見つめるだけ。



ダメだ。
これ以上、聞かせてはいけない。

「もう……恋なんてしない。」

彼女が言った。

「もう、誰も好きなんて………。」

きっと彼女は泣いている。



”もう恋なんてしない”!?
そんなのダメだよ。



俺は思いのすべてを込めて、彼女を後ろから抱きしめた。









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Crossing Love 4

『Crossing Love 4』



久々に楽しい一日だった。
嫌な事も不安な事も全部忘れていた。
実を言えば、デートの経験なんてない。
ショーちゃんとは小学校からの付き合いで……一緒にいる事も多くて、みんなには彼女だと思われているけど、付き合ってなんかいない。
……私の片想い。
キスだってした事ないんだもの。
今日……頬にだけど……初めて男の人にキスされた。
初めて……男の人と手を繋いで歩いた。
何もかもが初めてで、きっと敦賀さんの役になんて立てなかったと思う。
そして何よりも驚いたのは……嫌じゃなかった事。
ショーちゃんと手を繋いだり……キスしたりするのが夢だったけど、今ではそんな想像すら出来ないでいる。
だってショーちゃんが私にそんな事するなんて、有り得ないもの。
それだけに嬉しいとさえ思ってしまった自分に驚いている。
「最上さん。どうしたの?急に黙り込んで。」
いけない、敦賀さんにアパートまで送ってもらっている途中だった。
「すいません。ちょっと考え事です。」
「……悩み事なら聞くよ。」
敦賀さんは優しい。
……でも、話せるわけがない。
「敦賀さんのフラれる原因を……。」
「それなら、もういいから。………しばらくは誰とも付き合わないよ。このままだと”フラれ記録”更新されるだけな気がするし。」
「じゃあ、しばらく私はお役御免ですか?」
それは……さびしいな。
「……それはないよ。映画を見に行く約束だってしたし……あっ……でも、不破君に悪いかな。勘違いされでもしたら大変だ。」
胸がツキリと痛む。
そんな関係じゃないのに……怖くて否定出来ない。
「敦賀さん。この辺でいいですよ。もうすぐそこですし。」
「女性の一人歩きは危険だよ。ちゃんと送らせて。でないと安心出来ないから。」
……敦賀さんはいつもそう。
彼氏みたいに私を守ってくれる。
道を歩いていても、いつも自分が車道に近いところにいてくれる。
人混みの中でも、他人どぶつかる前にさりげなくかばってくれる。
歩く速度だって、いつも私に合わせてくれて………。
恋の相手が敦賀さんなら、こんなに淋しい思いしなくても済んだのかな。
私……敦賀さんに恋すれば良かった。



街灯の下に見知った人物の姿を見つけた。
「キョーコ。」
「あっ!ショーちゃん、お帰りなさい。」
ショーちゃんの顔は何故か険しい。
どうして怒ってるの?
「帰って来たんじゃねー……荷物を取りに来ただけだ。」
ショーちゃんの手には大きな鞄があって………。
彼の荷物はこうして、いつも運び出されて、アパートの荷物は少なくなっていく。
きっといつか……私の部屋には彼の物なんか、何一つなくなるんだろうな。
進学の為に上京した私。
一年遅れでショーちゃんが入学して、私の部屋には転がり込んできた。
今思えば、私を頼って来たのではなく、実家からの仕送りを家賃や生活費に回したくなかっただけなのだと思う。
そう……私はそれだけの女。
家政婦程度にしか、思われていない。
一年暮らして解った事。
「…………。」
「最上さん。もう大丈夫だね。不破君、誤解しないで、俺は彼女を送りに来ただけだから。」
「どうだかな。」
「どういう意味?」
「……他人の女引っ張り回して……最後は家まで送る?遊ぶのが目的の男の常套手段じゃねーかよ。」
「ショーちゃん!敦賀さんはそんな人じゃないよ!」
敦賀さんはそんな人じゃない。
だけど……ショーちゃんは……私は知ってるの。
見たんだもの……。
噂だって聞いているもの……。
ショーちゃんは私を女としてなんて見ていない。
なのにこんな時だけ、所有物扱いするのはどうして?
「君が思ってるような事は俺と最上さんの間にはないよ。彼女は友人。友人として付き合って貰ったんだ。遅くなってしまったからね……女性を独り歩きさせるわけにはいかないし、送らせてもらったんだ。」
「なら夜に歩かせるようなマネしなきゃいいだろうが。」
「もっとだね。……最上さん。ごめんね。じゃ、またね、おやすみ。」
………敦賀さんの言葉の一つ一つが心に突き刺さる。
ごめんなさい。
嫌な思いさせて。
立ち去る敦賀さんを見送るしか私には出来なかった。



ショーちゃんもそのまま出て行ってしまって……部屋には私一人。



化粧を落とす気力すらなく、ベッドに潜り込んで泣いた。



私の心が壊れていく。



助けて……。



脳裏に浮かぶのは優しい敦賀さんの笑顔だけだった。



助けて、敦賀さん。



私の心が壊れてしまう前に。

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げっか(月華)

Author:げっか(月華)
蓮キョ大好きです。
駄文しか書けませんが、よろしくお願いします。

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