甘いワナ 『強く抱いて』 〜キョーコ〜

この記事を閲覧するにはパスワードが必要です
パスワード入力

甘いワナ 『天然?魔性?どっちなのよ? ~カオリ~』




甘いワナ 『天然?魔性?どっちなのよ? ~カオリ~』




昨日はすごい物を見た。
ビーグールのレイノが現れたと思えば、追って登場したのは不破尚、更には敦賀蓮まで現れて、京子争奪戦を繰り広げるとは。
しかも争いの元たる当の本人ときたら、レイノを”ビーグル”呼ばわり、不破尚を”馬鹿”呼ばわり。
敦賀蓮など”大魔王”とか”似非紳士”とか”夜の帝王”とか呼んでなかった?
まがりなりにも事務所の大先輩で、『芸能界一いい男』と言われるあの人をそんな風に呼んでいいもの?
いいはずないわよね。
「やっぱり……”ナツ”だからなのかしら?」
それにしても凄かった。
撮影は”ナツ”に引っ張られる形でサクサク進み、午前中の撮影は予定より早く終わった。
『ツグミ。不破尚とビーグールに会いたくない?』
”ナツ”の言葉に反応したのは”ツグミ”だった。
結果、”ツグミ”に、監督におねだり我侭を言わせて、予定より早く、その上長めに確保できた休憩時間。
”ナツ”なら何でもありだ……と思ってはいたけど、その後の展開が限度無さ過ぎよ。
芸能界屈指のいい男が3人も集まって、繰り広げた腹の探り合いと舌戦と牽制と睨み合い。
レイノにあんな特技があった事も知らなかったし(ちょっとひいた。)、不破尚がクールとは言い難い程で口も悪かった(なんかいろいろ思い出してた……妄想??)、敦賀蓮にいたっては温厚な紳士な姿はどこへやら、目つきが変わっていたし(魔王とか夜の帝王とか似非紳士ってなんか分かる気がした。)、とにかくすんごいものを見た。
同じ芸能人の括りでも駆け出し女優だし、ジャンルも異なるしで彼らと接する機会などなく、私達にとってテレビの中の存在でしかなかった彼等。
別世界の人間かと思いきや、その真実は普通の人間。
そんな彼等をあそこまで身近に感じた要因はやはり”ナツ”の存在だった。
素の彼女からは予想もしてなかったけど、実は”魔性”?
敦賀蓮とは同じ事務所でドラマでも共演していたし、不破尚のPVにも出ていたから以前からの知り合いだったのは分かったけど、それにビーグールのレイノが加わってあんな展開になるなんて。
『”ナツ”ならともかく、”京子”が男を誑し込むって想像がつかないんだけど。素の彼女……いい子なのよね。』
それが何であんな事になってるのか、さっぱり分からない。
”ナツ”なら”魔性”って言ってもおかしくないけど、素の彼女は天然記念物並に礼儀正しい古風な子よ。
”魔性”なんてどこにもつながる要素ないじゃないの。
いい男を三人も虜にしている事実は隠しようのない事実だけれど。
今度、買い物か食事にでも誘ってみようかしら?
素の彼女と付き合えば、少しは分かるかもしれない。
天然なの?
魔性なの?
どっちなのよ。
まぁ、どっちにしても苦労するわよね。
あの人達が相手じゃ。
天然でも魔性でもどっちでもいいわ。
『あんたが”ナツ”でいる限り、私はあんたの理解者”カオリ”でいてあげるから。』




「薪野君。」
「監督。おはようございます。」
「おはよう。昨日は凄かったね。」
「えっ?」
どうやら監督もあの場を目撃していたらしい。
それなら監督はどう思ったのだろう?
あの普通じゃない関係を。
「”ナツ”なら分からんでもないが、あの素の彼女も実は魔性か?以前から知り合いのようだったし。」
やっぱりそう思うわよね?
「惜しいな。」
「は?何が惜しいんですか?」
「いや、”ナツ”が”あんな”だからなぁ。ナツの初期設定”彼氏持ち”ってのを省いたんだが惜しくなった。素の京子君なら”高校生の彼氏”でも良かったんだが、あの”ナツ”には普通高校生じゃつり合わないだろう?ある程度、大人の男、もしくは見劣りしないだけの男。どっちもその辺の並みの俳優やアイドルじゃ太刀打ちできそうになかったから諦めたんだが、昨日のを見てたら”ナツ”に男の影は欠かせないなって思ったよ。」
そうね。
それは私も同感だわ。
”ナツ”が、その辺のどうでもいいような男に惚れる分けないし、かといって男友達の一人もいないっていうのもうそ臭い。
でもどうすんの?
「昨日のあの設定、そのまま使えないかなぁ。」
「監督。それやったら、主役が入れ替わりかねませんよ。ただでさえ、”ナツ”のインパクトでマルミーがくわれちゃいそうなのに。」
第一、今からオファー出して、なんとかなるの?
人気グループのボーカリストにカリスマロックシンガー、その上、スケジュールは分刻みで一年先までぎっしりつまってると噂の人気俳優よ。
無理じゃないかしら。
「それもそうなんだが、やっぱりおしいな。」




それから少したって……それがまた別の形で実現する事になった。
BOX”R”の視聴率が他を圧倒し始めた(驚いた事に敦賀蓮主演のドラマといいとこ勝負)頃にテレビ局の企画番組の中で組まれた一話限りの特別編。
主役は”チトセ”ではなく、”ナツ”だった。
”ナツ”の学校外での姿を見て見たいという視聴者の声を元に作られたドラマの中で、私達があの日見た出来事が再現されていた。
あの三つ巴の……。
そのドラマの中、不破尚とレイノは意外な演技力を見せ、敦賀蓮は新境地を切り開いたと噂され大変な視聴率をたたき出した事は言うまでもない。
だけど私達は知っている。
アレが演技なんかじゃなかった事を。
ドラマの中で男達の戦いは終結せず、いい男三人を侍らす”女王ナツ”の図式が視聴者の意識に刷り込まれたその裏で、従う振りして実は影で糸をひく”大魔王”の存在がある事に気付いているのは多分、あの場に居合わせた私達と当事者だけだろうな。
『芸能界一いい男』とされるあの人が、実は恋にもがいていて、しかも嫉妬深かったなんて。
びっくりしたわ。




どんないい男でも恋の罠にはまってしまったら、ただの人。
それを知り尽くした女に遊ばれて、それでも恋しい女には敵わなくて。
男って馬鹿よね?
罠に自分からかかっていくんだもの。




END……






以上、終わりです。
お粗末様でした。

ここまで引っ張っといて、この結末?
ありえねぇべよ。

この流れを経て、モノマネとお花畑に続くのでした。

ちゃんちゃん。


ではまた。ぽっつ。

甘いワナ 『神様……この人を私に下さい。 ~キョーコ~』

期待を大きく裏切る展開。(期待なんてしてない?あはは。)

ご注意下さい。

ぶっこわ蓮ですから~~。

それでもいいわと言う、心広きお方……今しばし、お付き合い下さい。

というわけで……どぞ。




甘いワナ 『神様……この人を私に下さい。 ~キョーコ~』




また……やってしまった。
神様。
これを自業自得というのでしょうか?
一度『ナツ』になると、なかなか抜けにくくなる。
『ナツ』になるのが、すごく楽しくて、なりきった後はもう止まらない。
敦賀さんの手解きもあって、完成した『ナツ』。
敦賀さんがいなければ、あの『ナツ』はなかった。
そんな産みの親のような敦賀さんを、自分の楽しみの為に利用しようとする『ナツ』。
そして『ナツ』は『私』。
昨日テレビ局で思いついた悪戯。
何故か気配で自分を察知してくるレイノを自らを餌に誘き寄せ、ショータローをけしかけて、最後は敦賀さんの大魔王を降臨させてしまおうなんて……思いつくものだから、最後は自分がとんでもない目にあった。
他はともかく、敦賀さんを相手に、なんて事を。
前回で学習したはずなのに、またしてもやってしまった”ナツ”。
その後、とんでもない目にあって、その”とんでもない目”にあった果てが”これ”。
自分を背後から包み込む、鍛え上げられた腕。
びくともしない強固な腕の檻に閉じ込められて、抜け出すどころか身動きすら取れない。
今でこそ冷静に状況を把握しているが、目覚めた直後はかなり動揺した。
髪にかかる他人のものと知れる穏やかな寝息に目を覚ませば、視界にうつったのは数度見たことのある広過ぎる室内と壁。
しかも角度が違う。
勿論、自分の部屋であるはずもなく。
そして、素肌に直に感じる質感で、何も身につけていない事を知った。
覚醒してきた頭がしなくてもいい記憶を勝手に再生し、この現状に至るまでの過程を知らしめた。
途端に火に焼かれたかのように全身が熱くなってきて、心臓は有得ない程に大きく鼓動を繰り返し、もはや爆発寸前。
起き掛け数秒で、確実に寿命が縮まった。
どんなに足掻いても、逃避しようとしても、現状が変わるわけでもなく、諦めて…ため息を一つ。
一つ分かった事がある。
初めての夜も、一緒に迎えた朝も、『夢見る乙女の世界』とは、かなりかけ離れていた。
現実は甘くない。
敦賀さんに流されて……気がついたら、あんな事になってて、後戻りなんてできないとこまでいっちゃってて……。
赤ちゃんはコウノトリが…とか、キャベツ畑で……なんて言わないけれど、もう少し夢を見せてくれてもいいじゃない?
あんな……恥かしい思いするなんて……。
あんな生々しい事態は……。
「いや~~~~っ!!」
つい叫んでしまった。
「おはよう。」
当然ながら目を覚す私を捉えたままの腕の主。
「ところで”いや”って、何が?」
「……………。」
「拗ねてるの?」
『原因は貴方です。』
「許して。……ね?謝るから、こっち向いてくれない?」
『嫌です。』
「どうしても?」
『どうしてもです!!こんな状況で、貴方の顔なんか見れますかぁ!!』
「俺は君の顔が見たいんだけどな。」
『無理ですからっ!!』
「ダメ?」
『ダメ!!』
………ってなんで会話が成り立ってるの?
私一言もしゃべってないわよ!!
とにもかくにも、今この現状で彼の顔なんか見れるはずは無い。
こんな……こんな……こんな状態で……。
あ~~~っ!!
イヤーーーーーッ!!
また昨夜の事を思い出し、真っ赤になるのを通り越して、燃え尽きて灰になってしまいそうだ。
そんな自分を知ってか知らずか、クスリと笑う彼。
自分はこんなにも動揺しているのに、この余裕は何っ!?
そう思うと今度は腹が立ってきた。
『何なのよ~~っ!!』
この前このマンションに来た時に好きだと言われた。
告白されて……混乱した。
『恋なんてしない。』なんて思っていたけれど、それこそが恋の始まりを示すもので、自覚した時にはドップリとはまっていた。
もがけばもがく程に深みにはまっていくという状況にも全く気がつかず、気がつけば彼の腕の中。
これってなんか、彼の思う壺的な状況じゃない??
こうなるように仕向けられた気がするのは気のせい??
気のせいじゃないなら、いつから計画してたの?
展開が早すぎておっつかない。
しかも脱出不可能。
今ここで、悪態の一つもついたってバチは当たるまい。
『敦賀さんのバカぁ。待ってってお願いしたのに……。』
自然にもれる恨み節。
矛先はもちろん当の本人へ。
「……って言ったのに……。」
「ん?何を言ったって?」
分かってるくせにすっ呆ける様は、似非紳士の称号に相応しく、憎らしくなった。
「待ってって言ったのに……。」
口からついて出るは、積もり積もった恨み事。
朝起きてから、今に至るまでの間にかなり蓄積していた。
『だって……だって……初めてだったのよ!?』
気がついたら奪われてました……なんて状況は酷過ぎない?
それなのにこの男ときたら、いけしゃあしゃあとのたまうのだ。
「待ったよ。充分に待ったよ、俺は。君への気持ちを自覚してから、もう半年以上経つんだ。君は気づいてすらくれなかったけど、アプローチをし続けて数ヶ月経過している。十分待ったと思わない?君だけだよ、気づいてくれなかったの。周りにはバレバレなのにね。」
「それは一人我慢大会であって、待ったとは言いません!!貴方に告白されるまで、気付かなかったのは本当に申し訳ありませんでしたけど、今までのがアプローチというなら、貴方のアプローチは現実離れしていて、その上、遠まわし過ぎてラブミー部の私はちっとも理解できませんでした!!(ヤケだわっ)それに貴方に告白されましたけど、にわかに信じられなくて、私が貴方に抱いている気持ちが何なのか気付いたのも、つい最近なんです!!自覚したばっかりなのに……それが……それが……それがなんで、こんな事になるんですかぁ~~~~~~っ!!!」
「う~~ん。何でだろう?君はどう思う?」
「私に聞いて、どうすんですかっ!!」
「あっ!ほら、よく言うよね?『据え膳食わぬは男の』……。」
「据えてません!!」
「……好きなものは先に食べるべきだよね?」
「好きなものは後に取っとくモンです!!」
「で、誰かさんはいつも、取っておいた『好きな物』を幼馴染の彼に取られていたんだね。たとえばショートケーキのイチゴとか??」
「見てきたように言わないで下さいっ!!」
「こういうのなんて言うんだっけ?……悪がきにイチ……」
「それを言うなら『鳶に油揚げ』です!変な日本語作らないで下さい!って言うか微妙に違う気もしますけど!?第一私は食べ物じゃありませんしっ!!」
「ご馳走様。美味しかったよ。」
「貴方という人は~~っ!!」
完全に彼のペースに巻き込まれていた。
現実はやっぱり甘くない。
食うか食われるか、どっちかしかないんだ。
自然の摂理に従うしかないのなら……食われる前に食ってしまえ。
それが鉄則だ。
彼の抱きしめる腕の拘束が緩み、態勢を変える。
勝てないまでも一矢報いる意気込みで彼に向き合った。
身体がだるいとか、痛いとか言ってる場合ではない。
『負けないんだから!!』
キッと睨み付けた先で思わぬ笑顔に出くわして、勝敗は戦う前に決してしまった。
「やっとこっちを向いてくれた。」
「……………。」
「それに意外に元気で良かった。」
敦賀さんは柔らかく微笑んで、そっと抱きしめてくれた。
ヒートアップしていた気持ちも、恥ずかしさも、嘘のように治まって、残ったのは触れる肌に感じる心地よさと幸福感。
『恋をしてもいいの?もう一度、誰かを好きになってもいいの?』
”誰かを好きになる”?
”誰か”?
”誰か”じゃない。
”誰か”じゃ嫌。
恋をするなら……この人がいい。
『神様。もう一度、恋をしてもいいなら、この人を私に下さい。』
この人に恋をしていたいと思う。
「身体……辛くない?」
「……………。」
実際、辛いですよ。
だるいし。
それに恥ずかしい。
もう恥ずかし過ぎて、何も言えない。
でもね、今更、気遣うの?
ちょっと遅くない?
今頃、や~~っと少女漫画のお約束のシチュエーションですか?……と思ったら、やっぱり甘かった。
この人は普通じゃない。
「大丈夫じゃないみたいだね。ごめんね。」
分かってるなら言わないで下さい。
「ねぇ、最上さん。………俺と付き合って。」
……そういえば『好き』とは言ったけど”お付き合い宣言”はしていない。
「順番逆ですよ。」
「うん。そうだね。どうせだから、もっと順序を変えてみようか?」
「ふほぇっ?」
朝なのに敦賀さんが怪しげな夜の雰囲気を醸し出したのは気のせい??
これぞ敦賀連の真骨頂?
我侭、気まま、強引にマイウェイ。
夜の帝王敦賀蓮様は朝も健在で。
「ねぇ。どっちがいい?」
妖しさがどんどん増してきているのは気のせい?
「どっちって……。」
「もちろん。」
その何か含みのある笑みは何ですか?
何を企んでますか?
「子供。どっちがほしい?」
「ほぇっ!?」
「男の子と女の子どっちがいい?」
燦々と輝く笑みから放たれる破片が突き刺さって痛い。
夜の帝王から一変し、今度は似非紳士の悩殺スマイルが炸裂し、よからぬ画策に乗り出す敦賀さん。
動揺する自分に覆い被さって、正面から顔を覗き込んできて……迫って来て。
「ちょちょちょちょっ…ちょちょ~~~…ちょ~っと待って!!それ選択肢、間違ってますから~~っ!!」
「間違ってないよ。順番変える事が前提の話しだし。」
「順序を踏まえましょう!順序元に戻して下さい~ぃ。」
「もう狂ってるし、今更じゃないかな。やっちゃったものは仕方ないし。元に戻せないし。」
「今からでも遅くありませんから!!」
「じゃ、付き合ってくれるって事だよね。うん。良かった。」
「まずはおとも……。」
「お友達とこんな事しないよね?最上さんは。」
キラキラがキュラキュラに変わって、スマイルアタックは既に凶器。
「飛ばしちゃったものは仕方ないし。スタートはここからで。ね?」
選択権なし、拒否権なし。
貴方が私が仕掛けた恋の罠。
もう貴方から逃れるなんて無理なのかもしれない。
だから、捕まって上げる。
貴方が好きだから。




なのに貴方は言うの。
「最上さん……”キョーコ”って呼んでもいいよね?キョーコ……君が俺のものだって、もう一度証明してくれる?昨夜の事が夢じゃないって…俺に教えて。」
私はまた貴方の腕に包まれた。




しかけたつもりが、いつの間にか貴方のワナにかかって、私は貴方の恋人になりました。





→NEXT







まだ続くらしい??

すいません。

こんなのしか書けませんでした。

ぽっつに文才分けてください。

おねがいします。

甘いワナ 『君は俺に何を望む? ~蓮2~』

あちらに掲載して頂いてから半年……これが続きです。

もしよろしければ読んでやってくださいな。

ちなみにサブタイトル変えました。




甘いワナ 『君は俺に何を望む? ~蓮2~』




二人きりの楽屋に彼女のくぐもった声。
「ん~~っ!!」
抵抗する仕草を見せるけれど……ダメ。
放さない。
放してなんてあげない。
これは君が招いた結果。
君が望んだもの。
何よりも俺が望むもの。
こうなると分かっていて君が仕掛けてきた罠。
彼女の仕掛けた罠にかかった男は3人。
罠と知りつつ、捨て身でやってくる男。
罠とも知らずに、直球で挑んでくる男。
最後の一人は少々ひねくれた……俺。
罠と知りつつも行かない訳にはいかなかった。
行かなければ、あの2人に出し抜かれてしまう。
そうなっては目も当てられない。
しかしながら、年長者故か、俺自身の性格故か、素直にかかって上げる気にはなれず、ささやかながら、”お返し”を決行する。
その”お返し”も、一つは二つじゃ気が済まない。
これはもう徹底的にやるべきだ。(←それでも”ささやか”という……。)
俺は楽屋に彼女を連れ込むなり、その憑き物を落とすべく行動に出た。
少々(?)ぶちキレた俺は、拒む隙さえ与える事無く、キスをぶちかます。
彼女の腕を掴んで……抱き込んで……逃がさないように。
「ん……っん~~~~~っ!!」
逃げうつ舌を己の舌で搦め捕る。
何度も角度を変えながら舌だけでなく、口内を蹂躙した。
隙間さえ埋めるように……。
堪りに堪った俺の君への思いと、君の唇を奪った男への対抗心、心の内を見透かされ隠す必要もなくなった欲求。
それら全てを口移しで彼女の中に注ぎ込む。
とっくに素に戻っているだろう事は分かっていた。
分かってはいたけれど、簡単に放してなんて上げられない。
『まだ一回。”ファーストキス”にならないのなら、いいだろう?これくらいしても。』(←ささやかな”お返し”1つ目)
我ながら、いい逃げ口を作っておいたものだ。
これだけしても…後一回の猶予がある。
彼女にしてみれば、とんでもない言い分だろうけれど。
彼女を解放した頃には息も絶え絶えだった。




この後……涙を目に溜めつつ、俺に詫びるんだか、俺を抗議するんだか、もうどっちなんだか混乱と動揺で忙しい彼女を宥めるのに許された時間の半分を費やし、残った半分の時間で昼食をとる事となった。
キスした後なのに艶めいた展開にならないあたりはラブミー部員1号の称号にふさわしく、そればかりか彼女にとっては”俺の昼食”の方が重要課題だった。
昼食なんかはどうでもよかったが、涙を溜めながらもそれだけは頑として譲らない最上さんに根負けした。
やはり最上さんには弱い。
「……………。」
俺もまだまだ甘い。
根負けして用意された弁当に箸をつけるが、なかなか進まなかった。
気がつくと彼女が心配そうにこちらを見ていた。
「…あ…の………ちょっと席はずしてもいいですか~~~あぁっ??!!」
『語尾が妙に上がってるよ。何?その動揺の仕方は?何かまた企んでるの?懲りないね。』
「あ……う゛ぅ~…………。」
『逃げる気じゃないよね?』
「逃げませんから~~~っ!!」
『本当に??』
「ホントです~っ!!信じて下さい~っ!!」
『……じゃあ、いいよ。すぐ戻ってね。戻ってこなかっ……』
「すぐ戻りますぅ~~~~~~うっ!!」
泣きながら楽屋を飛び出した最上さん。
『俺、喋ってないんだけど、通じたみたいだね。もし本当に逃げてたらどうしようかな?それはそれで楽しくなりそうだ。』
……等と考えていたら、彼女はものすごい勢いで戻ってきた。
『……なんだ、残念。』
相当走ったのだろう、息が荒い。
手には何やら抱えている。
「ぜぇ……つつつ…つるっ……ぜぇ……つる…がさ…」
「まずは落ち着いたら?はい、お茶。」
彼女にお茶を差し出す。
冷めきっているけれど、今なら丁度いいだろう。
「ぜぇ…あ……あり……がとう……ござ……。」
「礼はいいから……。」
手にした包みをテーブルに置き、一気にお茶を飲み込む君。
……反り返った細くて白い首筋が……色っぽい。
その首筋に噛み付いてやりたい。
今すぐにでも俺のものにしたい。
「すいません。落ち着きました。」
俺の欲望に全く気付きもしない君。
本当に君は……なんて無防備なんだろう……。
どうしてこうも、この手の事にはあの並外れた学習能力を活かさないのか……甚だ疑問だ。
「で……これは?」
「お弁当ぉ……です。こちらの方が…食べやすいかと思って……。」
まだ、息切れを残しながら、一度テーブルに置いた包みを差し出した。
彼女の手作りの弁当だ。
「君のじゃなかったの?」
「敦賀さんのと交換です。私まだ手をつけてませんでしたし。」
「……そう。じゃ頂こうかな。」
「はい。」
正直、助かったと思った。
何せ揚げ物が……油のにおいが…きつかったから。
何より最上さんの手作り料理だ。
どんなものより旨いに決まっている。
そして俺の不機嫌さはどこへやら消え去っていた。
……完全にではないけれど。
「君は凄いね。」
「は?」
「なんでもないよ。」
でもね、それとこれとは別だから、帰ったらじっくり話を聞かせてもらうし(いろいろと。)、俺もじっくり話をさせてもらうから(それこそ、いろいろと。)。
流し見れば、途端にビクつく最上さん。
そんな姿を横目に彼女の弁当を攻略すべく、手を伸ばす。
蓋をあければ、品数どころか彩りまで完璧な中身。
さっき、あれだけ箸を伸ばすのにも抵抗があったのに、モノが変われば躊躇いすらない。
一つ口にして。
『やっぱり…旨い。』
現金な事だが、彼女の気遣いと文句のつけ様の無い味に、僅かに残ったモヤモヤも一応は納まった。
まずは一時休戦。
決戦は夜まで持ち越しだ。
『今夜は……覚悟してね。』
意外にも穏やかに過ぎた二人だけのランチタイム。
名残惜しいが、お互い仕事を抱えた身。
それぞれの持ち場へ戻らなければならない。
撮影終了後、俺の楽屋で待つよう言い置いて彼女と別れた。
それから、なるべく早くここから立ち去りたかった俺は、予定より早く終わらせられるよう気合を入れた。
……不破やレイノが彼女を待ち伏せしていないとは限らない。
彼女には、終わったらすぐに俺の楽屋で待つように……鍵もかけて誰が来てもドアは開けないように……と言い含めておいたが心配だ。
気分はまるで童話の七匹の子ヤギ。
笑える事に……子ヤギは一匹で、狼が一匹ではないし、何より俺自身が”狼”だというオチがある。
仕事も終えて、足早に楽屋に辿り着いた俺はドアに手をかけた。
狼-俺-の言う通りにちゃんと鍵をかけているかと思えば、予想に反してすんなり動くドアノブ。
『…鍵が……かかってない……。最上さんっ!!??』
どうしてくれようか……この娘……。
あらぬ方向に思考が向いてしまう。
ふと視線を感じて、そちらを見れば廊下の先には社さんがいて、手を振っていた。
気の利く社さんが、先に彼女に仕事の終わりを告げに来てくれていたのだ。
『消えたと思ったら貴方は。気……利かせ過ぎですよ。』
社さんに合図をおくりつつ、ドアを開けた。
そして俺は………。
「っ!!!!」
………驚いた。
目の前には床にひれ伏す最上さん。
いつからそうしていたのだろう、正座して三つ指立てて深々と頭を下げている姿に、「畳と布団があれば完璧」等と……一昔も前のドラマ設定にありそうな”結婚初夜に夫を待つ妻”のようだと……思ったのは俺の単なる妄想か。
「………………。」
更にその姿に眩暈を覚える。
『誘ってるのかっ!?』
今日の彼女の装いは、またしても事務所提供のナツ仕様。
驚いた事にスタイリストまでついていた。
社長公認、ナツ専属だ。
……というより、完全に着せ替え人形。
初めて遭遇した際の衣装も、そのスタイリストによるものだったと知り、猛然と抗議した事は記憶に新しい。
なのに、今日もまた…挑発的な姿をしている。
胸がダメなら脚!…とでも言うように、ミニスカートから見事な脚線美を晒していた。(←…が、書いてる途中でせっちゃんに先越された。笑。でも、そのまま続行した。)
正座している事で更に剥き出しになる生足。
今日だって時間さえあれば、文句言ってもう少し大人しい服装に変えさせたのに、生憎とそんな時間はなく、諦めざるを得なかった。
しかも彼女ときたら、現場までの交通手段を聞けば「自転車で……。」と言い出した。
ふざけんな……。(←キャラ違うし。)
そのスカートで自転車だと??……却下だ。
「では電車かバスで……。」
他の男の前に晒させられるかっ!!……もちろん、却下した。
幸いにして同じテレビ局での撮影だった為、言いくるめて彼女を連れ出す事に成功。
彼女にしてみれば早過ぎるくらいの局入りだったが、早い分にはいいだろう。
社さんの目すら気になっていたが、それを察したのか「少し用があるから……。」と局まで別行動をとってくれた。
おかげて車内は2人きり。
普段なら、キレイに揃えている足を今日に限っては組んでいて、たまに足を組み替えて………。
「……………………。」
助手席に彼女を乗せた事を心から後悔した。
まさか、今度は理性とバトルする羽目になるとは。
相手が自分なだけにどれだけ苦戦した事か。
そして今も彼女は俺の隣にいる。
今の彼女は素のままの彼女で、今度は大人しく足を揃えて助手席で俯いている。
キレイに揃えられた足。
それはそれで、なかなかそそるのだけど……。
つまり、どっちにしてもダメらしい。
「あの……敦賀さん?」
「何?」
無表情とそっけない対応が出てくるのは、最早防衛(防犯?)反応に近い。
「もしかしなくても事務所への道ではないのでは……。」
そう。全く逆方向だね。
事務所には行く気ないから。
これから向かうのは……。
「どこかでご飯を食べて行こう。」
その言葉に少しホッとしたような気配を感じて、意地悪したくなった。
いきなり爆弾を落とすのもかわいそうだから、少しずつ話しの方向を持っていく。
「食事の前に服を買いに行こうか。」
「服?敦賀さんの?」
「君の。」
「私の?最近テレビで顔でちゃってますけど、……今が既に変装みたいなもので絶対バレませんよ?放映されるのはもうちょっと先ですし。」
「明日も同じ服じゃダメでしょ?」
「えっ!?」
「ご飯食べたら、……次は俺の部屋。下宿先には今の内に連絡しておいた方がいいよ。話しも長くなりそうだし。………今日は帰すつもりないからね。」
「っ!!」
彼女を俺の部屋に連れ込むのは貴島に今の彼女の姿を見られた日以来の事。
あの日、今までの足踏み状態から一気に開放された俺は迫って迫って迫り倒した。
リビングで口説いて……、それでも落ちないから、今度は寝室に場所を変えて、腕の中に抱き込んで耳元で囁き続けた。
「好きだ。」と「愛してる。」と「付き合ってほしい。」と……もてる限りの言葉と心で、眠りに落ちる瞬間まで囁き続けた。(←貴島の兄さん…ここまでお見通し。)
それでも落ちなかったのは、さすがは最上さんだ。
ストレートに告白しても落ちないのだから、これまでの俺のささやかなアプローチなんて何処吹く風的なものでしかなかったのだろうな。
無駄な努力というやつだ。
誕生日……12時になると共に贈った「おめでとう。」の言葉と新種の”バラ”。
まだ市場には出回っていないそれを、かなり苦労して手に入れたというのに、その後……見事に琴南さんに競り負けた。……敗北。
そのバラに仕込んだ”貴石”……君の好みにとことんこだわった演出を添えて精一杯の気持ちを君に捧げたのに、俺の作り話をすっかり信じ込んでしまった君に、俺の思いは見事にかき消された。……自滅。
わざわざ時間を作ってラブミー部まで出向いてみれば、「お暇を潰すなら、お付き合いします。」と使命感に燃える君。
「時間があったものだから……。」なんて言ったのが失敗だった。……結果……玉砕。
極めつけは、躾のなってないバカ犬の所業。
さり気無く、それと知れる行動を起こす男達を牽制しつつ、彼女を密かに庇護下においていたのに、目の前で奪われた君の唇。……ありえない失態だ。
もう限界だ!
もう君を待つなんて無理だ!
もちろん諦めるなんて気はさらさら無い。
それならやるべき事はたった一つ。
今日は必ず……落とす!!
貴島との一件から、俺は遠慮する事を止めた。
日々ライバルは増殖の一途を辿り、遠慮なんかしていたら”トンビに油揚げ”だ。
後一歩なのだ。
なのに、ここに来て横から粗悪な犬が銜えて行きました……なんて事にでもなったら目も当てられない。
だから、今日で終わりにしよう。
最上さんには悪いけど、もう君を待つのは止めた。
「マンションに着いたら、ゆっくり話をしよう。」
「……………。」
「分かってるよね。前回の続き……というか、俺は君の返事が聞きたい。勿論、いい返事しか聞かないけどね。答えが出るまでゆっくり話そう。そのためにも、しっかり食べてね。ごはんが喉を通らなかったから、頭が動かない…とかいうのは無しだよ。俺が許さないから。君が料理するのも無し。時間が勿体無い。君の料理なら昼に堪能させてもらったし、これから先、君が俺の部屋で料理作って待ってるなんて状況も増えるだろうから、今日くらいはゆっくりしよう。ね?最上さん?」
せっかく飛び込んできた可愛いウサギ。(←子ヤギからウサギにバージョンアップ。バニーキョーコ危うし。)
警戒心の強い彼女だ。
ここで逃がしたら、いつ捕まるか分かったものではない。
そういった意味で今日は、本当にいいチャンスを得たものだと思う。




外での食事も済んで、今は俺の部屋で二人きり。
リビングのソファーの座り、彼女の返事を待つ。
勿論、大人しく待っているはずもなく。
第―”大人しく待つ”なんて、そんな事してたら夜が明ける。
夜どころか、年すら明けるかもしれない。(←注意…この話書き始めたの2月です。)
やってられるか!!
背もたれに張り付いた彼女を逃がさないように隣に座り、身体を彼女の前に回り込ませる。
彼女の小さな身体は、それだけで逃げ場を失った。
「返事は?」
「…………。」
「ここまで俺を煽ったんだ。こうなる事くらい分かってたよね?」
「…………。」
「最上さん?」
すっかり黙り込む最上さん。
既に余裕を無くした俺は5秒待って……痺れをきらした。(←短かっ!)
「言いたくないの?じゃあ代わりに俺が言ってあげるよ。これは確信なんだけど……君……俺の事”好き”だよね?」
「ふぇっ!?」
相変わらずな反応。
本当に飽きないよ、君は。
色気の感じない反応なだけに返って押しも強くなり、今の状況には好都合?
「好きだよね。」
更に押して見る。
「そそそそそ……そん……。」
「そんな事ないなんて……言わせないよ。」
押して押して押し捲れ!!(←誰…これ。)
「今日の事……君は俺に何を望んでたの?」
今日の悪戯を思いついたのは”ナツ”だ。
そしてナツは君。
君より、ちょっとだけ素直なナツ。
「……………。」
「君に本気の気持ちをぶつけるあの二人相手に、俺に何をさせたかったの?」
「……………。」
「ただ、俺達を鉢合わせさせる事だけが目的じゃなかっただろう?何を期待したの?ねぇ?」
俺と目を合わせたまま、反らす事も出来ずにいる彼女。
「俺に嫉妬して欲しかったの?俺の形振り構わない姿でも見たかった?俺の本音でも聞きたかった?君へ俺の気持ちを確かめたかった?……どれも当たりかな?」
顔を真っ赤にした君。
「まるで俺の事が好きだって言ってるみたいだよ。」
答えは出ているはずだ。
なのにまだ意地を張る君。
足掻いても無駄なのに……。
それは俺が痛感した事。
抗えば抗う程に、囚われていくというのに。
「何度でも言うよ。俺は君が好きだ。……君は?」
応えて最上さん。
俺も君に応えてあげるから。
だから応えて。




「……………です。」




消え入りそうな小さな声を俺は確かに聞き取ったけれど。
「もう一度言って。」
聞き間違えだなんて言わせない為にも、はっきり言ってもらおう。
「……好きです。」
「何が?」
涙目になり、俯きながら言う彼女に問う。
「何が好きなの?」
彼女の頤を取り、上を向かせる。




「貴方が好きです。」




一番欲しかった言葉。
一番欲しかった存在。
一番欲しかった心。
目の前にあるのは、俺にとってはこの世の至宝。
「キス……してもいい?」
君は頬を染めながらも頷いてくれた。
ねぇ……気付いてる?
俺と君のキス。
今日、始めて君にキスをした。
そして今、二度目のキスをしようとしてる。
『俺が君のファーストキスの相手になってもいい?』
俺の無言の問い掛けに…君は言葉を口にする代わりに静かに瞳を閉じた。
君の唇の触れた瞬間、この世のすべてを手に入れたような気がした。
やっと手に入れた俺だけの……。




今日、二度目の君とのキス。
薄く目を開いて彼女を盗み見る。
恥じらいにうっすらと頬を染めて、微かに睫を震わせて、俺に応えようとする最上さん。
まだ余裕はあったはずなのに、その余裕すら根こそぎ奪いさり、理性までも一気に吹っ飛ばすには十分な威力で。
奪われた理性のお返しに、口付けを深くしていく。
触れるだけだったキスは、君のすべてを奪うキスへと変わっていた。
長い……長いキスの後に君が言う。
潤んだ瞳で……。
俺を誘うその艶やかな唇で……。
「好きです。」
君は誰よりも愛しい人。
「敦賀さん。あの…手が…。」
気がつけば俺の手は既に君の胸をはい回っていた。(←無意識。)
「あの……私……。」
言いよどみながら君が言う。
この期に及んで「この先は……もう少し待って欲しい。」なんて、君らしいよ。
でもね、多分それは無理だよ。
君はもう俺の物だから。




やっと捕まえた。
もう離さないから。
だから君も俺を捕まえて、俺を離さないで。君の甘い魅惑のワナで……。






→NEXT






蓮……理性のゴム紐伸びきりました。ご報告まで!!
最初のサブタイトルなんだと思います?
”君は…馬鹿だろう?”でした。

ちなみにこれ書き始めたの2月なんですよ。

その時点ではほぼ出来てました。

ので……、別にナツの短いスカート姿は別にせっちゃんに対抗したわけではありません。

私もびっくりしたよ。


次はキョコたんです。


……つうわけで、また続きます。



駄文ですいません。

しかも……前回までと違ってちょいコメディー風味。

がっくりきた??

さらにすいません。

それでも、ここまでおつきあいありがとうございます。




ぽっつ。

甘いワナ 『骨なら骨らしく、朽ち果ててしまえ。 ~蓮~』  修正版

こっちもちょびっと修正。

基本変わってません。

駄文です。



甘いワナ 『骨なら骨らしく、朽ち果ててしまえ。 ~蓮~』  修正版




午前中の撮影も順調に終わり、再開は昼を挟んで一時間後。
スケジュール通りなら、俺の出番は更にもう少し先だ。
彼女の様子を見に行こう。
朝に聞いていた通りなら、まだ撮影中のはず。
その後に昼食を誘っても十分に時間はある。
社さんにそれを告げると、付いてくる意思は無いらしく、やけにニヤついた人の悪い笑みを浮かべて、「行って来い」と送り出された。
『何かと含みが多いですね。』
最近の社さんは、今のような腹に一物的な底意地の悪さを見せるようになった。
完全に遊ばれている。
なかなか進展しない俺の初恋事情と最上さんの直球すらも捻じ曲げる解読能力に痺れを切らして、楽しむ方向性を180度変えたらしい。
相変わらず、さりげなく協力はしてくれているけれど。
『全く進展ない訳じゃないんですよ。………ちょっと(なのか?)強引でしたけど。』
今の彼女は少なからず自分を意識してくれているはずだから。
とにかく今は彼女に会いたい。
彼女を思うだけで顔が綻ぶ。
逢いたい。
逸る気持ちのまま、スタジオから抜け出すべく、ドアに手をかけた。
そこで、外が騒がしいのに気付く。
言い争う声がした。
1つはアイツのモノだ。
『いたのか。不破。』
撮影が終了した直後、何かが激しくぶつかったような音がしたのを思い出し、彼が犯人かと確信した。
騒がしい男だ。
ただし、その騒がしいのも彼女の存在が絡む時に限る。
彼がここまで自分を曝け出しているという事は必ず彼女が傍にいる。
ただ、言い争っている相手は別の相手のようだ。
相手の声は聞こえないが「ビーグル」という発言で、誰と言い争っているのか知る事ができた。
最上さん命名”ビーグル”とイコールだとするならあの男。
彼女を組み敷いていた彼だ。
「近づくな」と、暗に『次はただでは済まさない』と知らしめておいたのに。
彼女に群がる『馬の骨』はどいつもこいつも頑丈過ぎるし、邪魔過ぎる。
「骨なら骨らしく、朽ち果ててしまえばいいものを……。」
意識もせず、本音がもれた。
”敦賀蓮”としては似つかわしくない独白だ。
その間にも外の様子はますますヒートアップしている。
どうやら彼ら以外にもいるらしく、いくつかの声が聞こえた。
そして……。
「男って馬鹿よね。」
僅かに開いたドアの隙間から聞こえたのは、最上さんの声。
『そう。馬鹿だよ。』
好きな女性相手に決定打を打てずに手をこまねいている。
彼等も。
自分も……。
ドアを開けて廊下に出れば、彼女の後ろ姿と言い争う2人の男の姿が目に入った。
あくまでも冷静さを保ったまま不破を挑発している……”レイノ”とか言ったか?……その彼と、そんな彼に熱くなって狂犬の如く食って掛かる不破。
『全く、どっちが犬だかな。』
いや、どっちも犬か。
一匹は血統証付きとでも勘違いしているかのようにふてぶてしいし、残る一匹は根本的に躾がなっていない犬っころ。
飼い主の愛情を独り占めせんと争っているかのようだ。
飼い主たる彼女はと言えば、それを見ているだけ。
『また、憑いているのか。』
あれは”ナツ”だ。
はた迷惑にも”馬の骨”の強化に勤しんでいる。
これは早々に手を打たないとマズイ事になりそうだ。
まずは現状を何とかするのが先決。
気配を殺して彼女に近づいた。
「あの人も早くこればいいのに……。」
『"あの人"?それは俺の事?俺を呼んでいるの?何故?君は何を望んでいる?』
「これじゃ、いつもと同じ。つまらないわ。こんな機会めったにないのよ。早く来て、魔王様。」
『魔王…ね。』
面と向かって言われた事はないけれど、彼女が魔王と称するのは間違いなく”俺”だ。
思い当たる節ならある。
彼女を怖がらせた事なら嫌と言う程にある。
故意であったり、無意識であったり、”俳優敦賀蓮”としてはありえない感情を彼女にぶつけてきた。
訳も分からず感情が溢れ出して、淡い期待を覆されて、嫉妬に狂って……激情を放出する。
そんな俺を彼女は”魔王”と称していたのだろう。
確か魔王以外にもあったはずだ。
俺の笑みに本気で怯える君。
社さんだって気付かない俺の笑顔の裏を君はいつも見抜く。
『君は何処まで俺を知っているの?ねぇ。最上さん?』
何だか複雑な気分だ。
背中を向けたまま、俺を待つ君。
君の望む通りにしてあげるよ。
だから、俺の願いも叶えて。
『オレハ キミガ ホシイ。』
まだ、俺の存在に気がつかない君。
『キヅイテ オレハ ココニイル。』
気づいて。
彼女の背後に立ち、ゆっくりとその肩に手をかけて、覆いかぶさる彼女の顔を覗き込んだ。
「”魔王”って俺の事?」
今の彼女になら、これくらいしても動じないだろうと踏んで、彼女が苦手とする笑みを添えて耳元で囁いた。
「お気に召しませんでしたか?」
「そんな風に言われた事がないからね。逆に新鮮だよ。」
「いつもは”大魔王”って呼んでるんですけど。他にもありますよ。”夜の帝王”とか”似非紳士”とか。」
どれも心当たりがあり過ぎた。
「じゃあ、今の俺は”夜の帝王”?」
耳元での囁いても、くすぐったげに身を竦めるだけ。
その頬に触れんばかりに顔を寄せても、全く動じる様子すらない。
そればかりか誘うような仕草さえ見せる始末だ。
ここまでくると憑きっぷりも見事と言える。
基本設定は出来ていたにしても、ウォーキングとポージングをたった数時間教えただけで、この完成度となりきりよう。
何時もながら、彼女の才能には舌を巻く。
いずれにせよ、彼女が許すなら、やらない方が損だ。
しかし、正直なところ、頬に手を添えて引き寄せようとしたのは自然の流れ。
無意識か?願望からか?欲にかられたのか?勝手な奪い合いを繰り広げる彼らに見せ付ける為か?仕掛けられた餌の誘惑に抗えなくなったのか?
……おそらく、その全部が作用した。
見つめ合ったまま、ゆっくりと縮まる君との距離。
勿論、このままでは終わらない事も分かっている。
彼女の唇に触れる前にきっとストッパーが作動するだろう。
彼女が正気に戻るか、それとも……。
「敦賀っ!!テメェ、何してやがるっ!!」
「やっと来たのか。」
犬の方が先だった。
もう少し言い合いをしてくれていても良かったのに。
「そんなに声を荒げて……、ここが何処だか分かっているのか?局内に騒動が知れ渡るぞ。不破。」
「その局内で、キョーコに手を出そうとしてたテメェが言うなっ!!」
全くだね。
君にしては珍しく正論だよ。
それと釘を刺すべき、もう一人の存在を見る。
「レイノ君だっけ?特に君には忠告しておいたはずだけどね。」
何をとは言わない。
彼には確実に読み取れているはずだ。
「正直アンタには近づきたくないさ。望みもしないのに感情がこっちに流れ込んできて疲れる。見たくないものを見せられるんだ。あんなものは苦痛以外の何もでもない。今も出来るならここから立ち去りたい気分だ。何も感じない不破が羨ましいね。」
「俺にじゃない。俺は”この娘”に近づくなと言ったのだけど?」
「そのキョーコに呼ばれたんだ。仕方ないだろう?」
コイツは本当に何なんだ。
おそらくは俺の正体まで知っている。
俺の感情も読み取り、ある意味俺自身より、俺の本心に気付いているのかも知れない。
「それに俺は彼女に危害を加える気はない。」
だから、非難される謂れはないと?
宣戦布告のつもりか?
それで俺と並んだつもりか?
勘違いするにも甚だしい。
俺には一つの核心がある。
俺と彼らは何も同じ立ち位置にいるわけではない。
溜め込んだ余力が違うし、一歩も二歩も先にいる事を自負している。
ただし、うかうかしていられないのも事実。
本気を見せる彼らに、彼女の心が動く可能性だってある。
そうなってしまえば全てが振り出しに戻ってしまう。
勿論、そんな事はさせる気はない。
誰であろうとも決して渡さない。
俺は必ず彼女を手に入れる。
神にでも逆らってみせると決めたあの日から、少しずつ”俺”という存在を示してみせた。
恋愛に臆病な彼女が逃げ出さないように、気付かれないように庇護下において、彼女が自分から男としての俺を受け入れてくれるようになるまで待つつもりでいた。
自分の気持ちを強引に押さえつけて待った。
待った結果……君は俺を意識するどころか、無意識に馬の骨作りに精を出しては俺に忍耐を強いてきた。
不破に唇を奪われた君と守りきれなかった俺。
その上、あの好みに煩い貴島さえもオトシてしまった君。
俺の忍耐力は極限まで擦り減って、我慢も既に限界にまで達している。
これ以上、厄介なライバルを増やさせて堪るか!
横からやってきたやつに掻っ攫われるなんて、真っ平ごめんだ。
「アンタ、今”いい顔”してるぜ。不破といい、アンタといい、ヒーローのくせに極悪な面をする。」
「そうだね。今は君の方が女の子ウケしそうだね。今の俺は彼女に言わせると”大魔王”って事になるらしいから。」
「大魔王ね。納得だ。」
動じた様子もなく不敵に笑う彼。
「前に言ってたよな。キョーコに悪さするヤツは叩きのめすんだろう?」
おそらく彼が言っているのは、俺自身忘れたい……消し去ってしまいたいあの日の出来事。
「だったらコイツはどうする?目の前で、奪われたんだろう?……ああ、アンタも同罪か。踏み止まったようだが、思惑通りに事は運んだんだろう?しかしまぁ、うまく言いくるめたもんだよ。キョーコを怯えさせるのも俺以上にお得意のようだ。」
「………。」
何故、それを知ってるのか?……なんて思うのも馬鹿らしくなってきた。
「さっきキョーコに触れた時に全部見えた。……出遅れたのは俺の方か。」
憂いすら含んだ表情を浮かべ、苦しげに言う。
好きな女性の唇を奪われたと知ったのだから、当然と言えば当然か。
目の前で奪われた俺と、過去であるが故に受け止めるしかない彼。
共感はできる。
だが、馴れ合う気は全くない。
「不破。出し抜いたつもりでいるなら改めた方がいいぞ。誰かさんが上書きしてしまったからな。お前がでかい花束と一緒にキョーコに押し売りした”あれ”だ。残念だったな。」
全く余計な事を言う。
あの日、俺のやった事なんて、コイツのした事に比べれば小さな事だろう。
「なんだとっ!!」
予想に反せず、噛み付いてくる不破。
誇大妄想しているのは確かだ。
「本腰入れて、口説き始めたみたいだしな。お互い余裕も意地も張ってる場合じゃなくなったぞ。」
「………。」
どこまで特殊な男なんだ。
一触即発的な状況。
同じ罠にかかり、同じ檻の中。
求める餌が同じなら、奪い合いになるのは当然の事。
不破は戦う気満々っといった風だし、レイノも全く引き下がる気はない様子だ。
勿論、俺も譲る気などあるはずもなく……。
続く沈黙と睨み合い。
腐っても芸能人。
こんな人前で喧嘩など以ての外。
今まで俺がいた現場はこの廊下の壁を一枚隔てただけ。
この騒がしい状況で人が出てこないのはきっと、何事か察した社さんのおかげだろう。
まったく優秀なマネージャーだ。
しかし、それだって限界がある。
ここは早々に事を収めるべきだ。
『さて、どうしようか』と考えあぐねていたところに思考を遮る笑い声。
「…くっ……あははは。」
最上さんだ。
更に廊下の先から聞こえてきた女性の声。
「尚!どこにいるのっ!?」
「祥子さん。」
「尚!こんなと…こ……えっ!?」
不破のマネージャーだ。
これ以上にない最悪な三つ巴の状況に出くわした彼のマネージャーが真っ青になって固まった。
「あら残念。もう時間切れ。」
不破が舌打ちをし、レイノが深くため息をつく。
「キョーコ。後で聞かせてもらうからな。」
腕時計で時間を確認しているところからすると本当に時間がないのだろう。
立ち去り際に俺にむけた視線はなかなかのものだった。
それを目にしたビーグールの面々が青ざめる程に。
『”後で”なんて、そんな時間あげる気はないけどね。』
マネージャーと共に立ち去る不和の後ろ姿を見送った。
「レイノ。俺達もだ。」
同じ番組に出演するのだろう、彼の本気を知ったのかビーグールの面々が茶化す様子もなく待っている。
仕事前なら、そう余裕のある状況ではなかったはずだ。
ただ彼女に会う為に足を運んだ男と彼女を守る為だけに駆け付けた男。
「残念だが、今日はここまでだ。抜け駆けしてキョーコに手を出すなよ。今、一番危険なのは俺でも不破でもない。アンタだからな。」
『分かってるじゃないか。さて、どうしようか?』
また俺の心を読んだのか、眉根をよせる彼。
「……アンタや不破より先にキョーコに会いたかったよ。」
苦しげな表情を浮かべて背を向ける彼の姿を目にし、自分が逆らおうとしていたはずのこの運命に心底感謝した。
少しでも何かが違っていれば、自分が優位に立つなんてなかっただろうから。
彼らが立ち去った後、残った俺は当然最上さんの捕獲に乗り出す。
こうなった以上、逃がすわけにはいかない。
少人数とはいえ、人前でこんな茶番劇をさせられたのだから。
「最上さん。君、時間あるはよね?昼もまだだろう?俺に付き合って。話しを聞かせてもらおうか。」
「………。」
嫌とは言わせない。
分かっていて仕掛けたんだろう?
ある程度の覚悟はしていたはずだ。
「お付き合いしますよ。」
まだ素には戻らないらしい。
まぁ、ここで素に戻られても困った展開になりそうだから、助かりはするのだけど。
「ちょっと行って来るわ。あっ、ツグミ。ごめん。レイノと尚のサイン貰えなかったわね。この人のサインで我慢して?人数分しっかりぶん捕ってきてあげるわ。じゃまた後でね。」
今見た出来事に、驚き、恐れ、好奇心と正に三者三様の様子を見せる共演者達に声をかけた君。
彼女らに弁解する事すらしない。
余裕だね。
その余裕が羨ましいよ。
全て、寸分違わずに君の予想通りの展開になったんだろう?
ビーグールの彼が君に引き寄せられて来たのも、不破がここにくるように仕向けたのも君だ。
不破を呼び出すのは簡単だよね。
君が同じ局にいる事を示すだけでいい。
スタッフの一人でも捕まえて、君の存在を焼付ければいいのだから。
”京子”の虜になった男が、それこそ一日中君の名前を口にするだろうから。
ビーグールの彼は必ず君に接触してくるはずだし、不破はそれを阻止する為に必死で君を探すだろう。
後は俺だ。
俺の今日のスケジュールを知っていた君は時間を計って俺を遭遇させた。
彼らが喧嘩でもしそうなら、俺に止めさせようとでもしてたんだろう?
俺が加わる事で保たれた均衡。
『彼らを止めることはできたけれど、俺はどうしたらいい?俺を止めてくれるのは誰?俺を止められるのは君だけ。君しかいないのに。』
無理矢理に眠らせておいた感情を揺さぶり起こしたのは君。
これから起こる事は全部君が君が招いた結果。
遊びの時間は、もう終わりにしよう、最上さん。
彼女についてくるように視線で促した。
俺の隣に並んで歩き出した君。
この先に何が待っているか気づいてる?
罠だよ。
たくさんの罠を張って君を閉じ込めて上げる。
罠をはって待っていたのは何も君だけじゃない。
ほら、飛び込んでおいで。
君の罠ほど甘美なものではないけれど、変わりに俺の全てをあげる。
もう逃がして上げない。




ねぇ君は知ってた?俺も君もとっくの昔に捕われの身だって事を。あの幼き日の思い出という名の罠にかかったままだって事を……。






→Next






ここまでが大御所LOVER'S NAME様に投稿させていただいたものになります。
はっきり言いまして……なんも考えてません。
だってただひたすら蓮に「朽ち果てろ」って言わせてみたかっただけなんで。

書いておきながらなんですが、『なっちゃんのお遊びはこの程度で済むのか???』とか今更思う私。
あの3人呼び出しといて時間切れでお開き???他になかったのか!?
なっちゃん何にもしてないし。
どうも中途半端だな~~。

どうか平にお許し下さい。

この後、この開き直った(理性のゴム糸…延びっぱなしの)
魔王様がどこまで食らいつくか……温かく見守って頂ければ幸いでございます。

プロフィール

げっか(月華)

Author:げっか(月華)
蓮キョ大好きです。
駄文しか書けませんが、よろしくお願いします。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
小説・文学
723位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
二次小説
349位
アクセスランキングを見る>>
フリーエリア

バナーリンク完了
画像つきリンクはバナーをお持ちのサイト様のみとさせていただきました。
私の実力的に無理なんで、すいません。

スキビ☆ランキング様
↓↓↓↓
スキビ☆ランキング様

妄想☆爆走ビート~スキップなんかじゃいられない 妄想☆爆走ビート マサシ様


ド素人のスキビブログ18禁様
ド素人のスキビブログ18禁 氷樹様


艶やかな微笑様
艶やかな微笑 peach tea no1様


桃色無印様
桃色無印 きゅ。様


pink@ピグ様 pink@ピグ きゅ。様


*ソラハナ*様
*ソラハナ* MOKOM様


SKB様

SKB Agren様


THE SACRED LOTUS 天音蓮華様

THE SACRED LOTUS 天音蓮華様


Kierkegaard様
Kierkegaard perorin様


蓮キョ☆メロキュン推進!「ラブコラボ研究所」 (風月のスキビだより) 風月様
蓮キョ☆メロキュン推進!「ラブコラボ研究所」 (風月のスキビだより) 風月様


サイト名:月と蝶
URL:http://tukitocho.blog.fc2.com/

よかったらアメブロへもどうぞ。
http://ameblo.jp/pochiouji/
月と蝶
携帯でもどぞ。
QR
月にとまった蝶々様カウンター
リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる