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強く儚い者達 10

真実の名を知っているのは名をくれた両親だけ。
その名を明かしていいのは生涯一度きり。
真実の名は王家の男子のみに与えられるもの。
真実の名を知る者は強い意思をもってすれば相手を支配できる。
だから、生涯一度だけ己の名を託す。
伴侶となる女性に。
それは命を預けるようなもの。
真実の名を明かさぬまま婚姻する者達も多い。
不貞を働くのに、自分を支配する力を持つ妻の存在は邪魔でしかないからだ。
そんな大人達の事情を知ったのはいつだったか。
祖父も父もただ一人の女性だけを見てきたから、大分遅かったかもしれない。
俺自身、突然現れて強引に婚約者へ真実の名を教える気は全く起きなかった。
信用できる相手ではなかった事と…何よりも本能がそれをさせなかったのではないかと思う。
この女ではないと、運命の相手は他にいると深層意識がそう認識していたのではないかと思う。
隣国の姫には…何度も誘われていたのは事実だ。
事実だけど……姫に触れる気はなくて逃げていた。
姫が滞在する間は休む部屋を日ごと変えていた。
かわすのが面倒になったから。

いつかは覚悟しなければと思ってはいた。
国の為に。
国を背負う覚悟をし、王となる者の務めとして旅に出たつもりだったが、間違っていたようだ。

この度は王たる者の試練ではない。
王が愛する者を取り戻す為の旅なのだ。

それはヒズリ家が王位を継承するようになってから背負った定め。
それ以前はフワ家が…。

フワ家からヒズリ家に王位が移行した時、王となる資格を得ていたのは、祖父と父と……俺。
祖父と父の真実の名を知るのは祖母と母。
俺の真実の名を知っていたのは……両親と……。

『キョーコ!』
『レン様は王子様になっちゃったのね。もう、一緒に遊べないの?レン様?』
『そんなことはないよ!』
『でも、母様が言っていたもの。レン様はどこか他の国のお姫様と結婚するって。』
『しないよ。僕はキョーコがいいんだ。キョーコ、君が好きなんだ。ずっと君だけが好きだった。僕のお妃様になって。』
『どうやって?』
『いい方法があるんだ。耳を貸して、キョーコ。』
『?』
『僕の本当の名前を教えてあげる。』
『レン様。』
『僕の本当の名前はね。』

ーーークオンだよ。ーーー

「っ!!」

記憶がない!
その後、キョーコと俺はどうした?
キョーコは……どうなった?

「思い出したみたいね。」

俺の中から……誰の記憶からもキョーコの存在が消えた瞬間。
俺が平穏だった彼女の運命を変えてしまった。

俺が彼女に早過ぎる試練を与えてしまった。

この島は王位を継ぐ者の真実の名を知る者の…伴侶となる者を捕らえる島。










こっそり、ひっそり、気ままに記事アップ。
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お礼とお詫び

しばらく留守にしておりました。
コメント頂いておりましたのにも気がつかず、失礼いたしました。

5月18日朱華様

まだこちらに起こし頂いているかは把握しかねるところではございませんが、朱華様へ
コメントありがとうございました。
お礼が遅くなりました。
申し訳ありません。

またの起こしをお待ちしております。



拍手を下さった皆様、本当にありがとうございます。
未更新にもかかわらず絶えず拍手を頂いておりました事に心より感謝申し上げます。


記事は超鈍足になりそうではございますが今後も少しずつアップしたいと考えております。
何卒よろしくお願い申し上げます。

それではまた。



月華

強く儚い者達 9

魔女は彼女の……キョーコの中にいた。

キョーコの呼びかけに応えなかったのは、自ら俺を試す為。

俺がキョーコを連れ戻すに相応しい男かどうかを見極める為。

「こちらにいらっしゃい。あなたが望みを叶えて上げる。」

壁沿いに螺旋を描いて上へと伸びる階段を示し、キョーコの身に宿る魔女が静かに言った。

おれの望み?
そんなの…一つしかない。

キョーコを返してくれ。

それだけだ。

多分…魔女は俺の望みを知っている。
知っていて〝望みを叶える〟と言っているのだ。
それは確信。

魔女について上へと続く階段を登る。
しばらく上ると階段が途切れているのが分かった。
そこが塔の一番上なのだろう。
小さな扉の前に突き当たる。

「中にお入りなさい。」

先に中に入り、ドアを開けたまま待つ彼女。
身を屈めて開かれたドアを潜る。

中は以外に広かった。
家具と言える物が少ない為、広く見えるのかもしれない。

部屋の中央には大きな水瓶が一つ。

「自分が何の為にこの島に来たのか、もう分かっているわね。」

魔女は俺の心を読んでいる。
今更、驚きもしないけど。

「でも……あなたの願いは簡単には叶えられそうにない。」
「……俺の望みを叶えると言った。」
「覚悟が必要なのよ。失敗すれば、この子はあなたの元に戻る事はない。永遠にこの島から出る事は叶わなくなる。見たでしょう。石化した魔女の姿を。」
「あなたがやったのか?」
「いいえ。彼女が望んだ事よ。自ら石になる事を選んだの。愛した王子と一緒にね。」
「ショー王子の婚約者は魔女だったのか?」
「いいえ。真実を知り、王子の裏切りに絶望し、魔女になったのよ。魔女になって得た力で彼女は石になる事を選んだだけ。王子が自分から離れていかないように。」
「……君も彼女達と同じ…人間だったのか?」
「そうよ。私の身体は随分と昔に朽ち果ててしまったけれど。残っているのは、魂とこの心だけ。」
「あなたも…裏切られた?」
「さぁ、どうだったかしら?忘れたわ。何百年も昔の事だもの。…私の事はどうでもいいわ。あなたはこの子を助けたいのでしょう?早く手をうたないとこの子も魔女になるわよ。私の魔力を吸収しているの。長くこの島にいたから、尚更ね。半年前から魔力の吸収が早くなった。あなたに花を届けたでしょう?それもけして枯れない花を。空間も時間も歪める程の魔力よ。私が持て余している魔力をこの子は苦もなく制御する。更にここ数日で加速している。……魔女になりかけているのよ。」

キョーコが魔女になる?
魔女になればこの島から出られなくなるという……。
冗談じゃない。
俺はキョーコを取り戻すんだ。

そんな事ばかりを考えていた俺に魔女ミオは言った。

「あなたのせいよ。」


俺のせい?
何がどうなっている?
この島に長くい過ぎたとも言っていたから、俺が迎えに来るのが遅かったということか?

「この子は知っているの。あなたに婚約者がいる事を。」
「隣国から押し付けられただけだ!俺にはキョーコがいる!キョーコ以外を妻に迎える気は無い!キョーコにもそう話した。」
「この子は見てしまったの。あなたの婚約者の秘め事を。」

秘め事?
俺があの姫と関係を持ったとでも言いたいのか?
それこそ冗談じゃない!
キョーコにも直接言われて否定したのに信じてくれなかったのか。
とにかく誤解なら解かなければ。

「覚えはない!」
「そこに水瓶があるでしょう?水鏡よ。遠見ができるの。」
「俺は姫には触れてはいない!」
「ええ、あなたではなかったわ。でも、この子は姫君の相手はあなただと思い込んでる。」

あの女…国に叩き返してやる。
誰と関係を持とうが俺にはどうでもいい。
だが、キョーコを苦しませた事だけは許し難い。
キョーコは必ず取り戻す。
だが。万が一にもそれが叶わなかった時は……国ごと滅ぼしてやる。

俺の中に怒りの渦が湧き上がる。

「おやめなさい。黒い感情はこの子が魔女になるのを早めるだけよ。」
「黒い感情?」
「憎しみ、嫉み、殺意……そういう感情は魔力の糧となるものよ。何よりこの子は誰かが不幸になる事なんて望んではいないわ。」

いったいなんなんだ。
この島に囚われていたのは……。
フワ家のショー王子の婚約者だったらしい。
次は祖母と母と……それから……キョーコ。

つまり、王妃となるはずの女性達がこの島に囚われていた事になる。

ミオ…彼女も本来ならば王妃となる身だったのだろう。

一つ疑問がある。

何故、あの女……隣国の姫は島に囚われなかったのか。

腹立たしいが、あの隣国の姫が王妃になる可能性だってあったのに。

キョーコと彼女の違いはなんだ?

国の者ではないからか?

王家の血を引く家系の中でも、王に次ぐ有力者たるモガミ家。
由緒正しい血を受け継ぐ者だから?

彼女と出会った頃、俺は王家一族の中でも末席にいた。
モガミ家の人間と結婚など、あり得ないほどの身分差だった。
モガミ家の者たちは何も言いはしなかったが、周囲はそれをよしとはしなかった。
だから会うのはいつも二人だけの秘密の場所……あの花畑で。

子供ながらに、彼女と結ばれる事は無いのだと知っていた。
それでも彼女が大好きだった。

自体が一変したのは彼女と出会って四年後の事。

フワ家が王座を退き、ヒズリ家が王位を継承した時……俺は……彼女に一番に会いに行った。
会いに行って、彼女に思いを告げた。
その証に真実の名を……。

真実の名?

記憶が一気に蘇る。
どこに消えていたのかと問いたくなる程の鮮明な記憶。

『キョーコ。約束して。』
『レン様?』
『大人になったら、僕と結婚してくれるって約束して。』

二人だけの秘密の花園。
頷いてくれた彼女に俺は、その耳元でそっと告げた。

真実の名を……。

「…………。」
「そうよ。ここに囚われるのは王となる者の真実の名を知る人間よ。」



そうだ……彼女がこの島に囚われたのは……俺のせい。

強く儚い者達 8

太陽が水平線の向こうに沈み、夜の闇が訪れる。
闇を制するのは数多の星々を従えた銀に輝く美しい月。
闇は月の輝きの前に平伏すのだ。
魔女の島に相応しい幻想的な月の夜。

かつてこれ程に美しい月を見た事があっただろうか。
闇よりも夜を支配するものなど無いと思っていたのに、この島では夜を象徴するものはあの美しい月。
慎ましくも美しく輝くその様は、まるで彼女のようだ。
何にも固執せず、ただそこにあるだけだった俺の中で慎ましくも美しく輝く君。
闇の中にあってさえ、輝きを忘れないあの月は君そのものだ。
君が月なら、俺は君を包み込む夜の闇になろう。
輝き疲れたのならそっと包み込んであげる。
君という月が美しく輝き続けられるように。



月明かりの中、俺はキョーコの案内で魔女が住む黒の塔に足を踏み入れた。
小さめの戸を開け、入口をくぐれば物音一つない静かな空間が広がっていた。
キョーコの持つ小さなランタンの明かりに照らされた内部は以外な広さを保っていた。
中は吹き抜けになっていて暗闇の中では天井は見えないが響く音でかなり高い事が知れた。

キョーコが手にしたランタンの光が何かを浮かび上がらせる。

中央に何かがある。

いや……何か……いる?

そしてギョッとした。
闇の中に人の姿を見いだしたのだ。

「キョーコ!」
「大丈夫です。これは嘆きの像と呼ばれるもの。」

キョーコが明かりを近づけると白く輝く彫像が姿を見せた。
精巧出来た石像だった。
近寄って見る。
倒れた男とその男を膝の上に抱き愛しげに見つめる幼さを残した女性の像だった。

愛しげに見つめる表情の中に感じる何かがある。
目尻から頬へとかかる一筋の後は涙?

「……人間が……そのまま石になったみたいに精巧だね。」
「そうかもしれません。」
「えっ?」
「歴代の魔女なのかもしれません。人の手で作るにはあまりに精工過ぎると、以前……ェリー様がいって言ってらしたから。」
「えっ?誰?」

誰か自分の知っている人物の名を聞いた気がして、もう一度問いただす。

「今、ジェリーって言わなかった?」

それは祖母の名だ。

「ねぇ、キョーコ。もしかして、もう一人はジュリエナっていう名前だったりする?」
「ジュリエナ様……ええ、そんな気がします。」

ジュリエナは母だ。

今頃、気付かされた。
祖父が王に付き、父が王太子としてこの島から国に帰って来るまでの数年間、母との思い出が全くない事に。
父が王座に付き、王太子となった俺を母が強く抱きしめてくれた記憶は鮮明に残っているのに、それ以前の記憶がない。
あれだけ強烈にインパクトがある人なのに過去数年間、俺の記憶に存在しないなんて事があるわけがない。

「キョーコ、君と一緒にいたという二人の事だけど。俺の祖母と母の事かもしれない。」

いや、それ以外に考えられなかった。

そして一つの仮定を導き出す。
この石像の女性は魔女ではなく、キョーコや母達と同じく、ここに連れて来られた者なのかもしれないと。

男の方にも見覚えがある気がした。
……女性の方も覚えがあるような。

どこで?

………王宮だ!
王宮でこの二人に似た人間を見た事がある。

10年前、王家の末席にいた俺。
そんなに多くはないが、会ったことがある。
会話を交わしたわけでもないし、幼い時の記憶だ、確かなものかどうかもあやしいところだが。

そして気付く。
男の胸……マントで半分隠れてはいるが、紋章が見えた。
盾と剣をあしらった紋章はフワ王家のもの。

やはり、これは。

「そうよ。これはフワ家の王子とその婚約者よ。」

冷たい声が響く。
キョーコの姿でキョーコではない者が言う。

「君は誰だ?」

キョーコの中に誰かがいる。

「私はミオ。この島の魔女。」



魔女は彼女の中にいた。



彼女の中にいて俺を見ていた。







◇◆◇◆◇





ども月華です。
『強く儚いもの達』妄想です。

書く度に、時間が経つ度に、話しの流れが変化して来ています。

どうか、お許しを。



それではまた。







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強く儚い者達 7《修正版》

パラレルです。
今回はキョコさんも蓮さんも出てきません。

ではではどぞ。



◆◇◆◇◆



この島に辿り着いた夜から俺は一軒の家に身を寄せていた。
昨夜は旅の疲れもあってか、夕食を腹に納めた後急に眠気が襲ってきた為、家主に断りを入れて案内された部屋で眠りを貪った。
深い眠りから覚めたのは太陽が昼に近い時刻を示していた。
慌てて飛び起きて、物音のする階下へと足を向けた。
そこにはこの家の女主人がいて、「今、食事を準備しているからね。外で顔を洗っておいで。」と言われ、そうさせて貰った。

「すいません。夕べからろくな礼もせずに。」

非礼を詫びると女主人は気にする事はないと言ってくれた。

この島に魔女以外に人が住んでいるとは思わなかった。
予想外の事に驚き、今こうして宛てがわれている環境にさらに驚かされている。

島に着いても、魔女に会えるのは王太子だけだと言われていた。
だから、王太子が戻るまで野営するつもりでいた俺達。
危険な生き物がいないとも限らない。
島を出るまでは…あの魔の海域を越えるまでは安らぎはないと覚悟していた俺達。
なのに接岸出来る入江には、人の手が加えられた形跡があり、一隻なら大きな船も繋留出来るように整備されていた。
そこには少女が一人待っていた。
魔女かと思えばそうではないと言う。
驚いた事に、この少女も魔法の力を操れるらしく、俺達の船を守っていたのは彼女だったらしい。
なんらかの形で……この場合”魔法の力”としか思えないが、船旅中に王太子と接触していたようで、それにも心底驚かされた。
そんな彼女は”使いの者を遣すからこのまま待つように”と言い置いて、王太子を連れていってしまった。
少女が言った通り入江に男性が現れたのは、それからすぐの事。
案内人の彼に促されるまま歩いて、着いた先は集落だった。
滞在中は幾人かに別れて島の住人の世話になる事になり、今、俺が世話になっているのは中年のご夫婦の家。
二人が営む小さな食堂だ。
しかし商売をしているわけではない。
この島には通貨などなく、物々交換が主流らしい。
畑を耕す者、狩りをする者、漁をする者、この夫婦のように食事を提供する者、それぞれ役割をもってこの島に住む人々。
これがこの島の在り方なのだという。
彼らと話していると、よく”キョーコ”という名前が出て来る。
誰なのか聞いてみると王太子を迎えに来たあの少女である事が分かった。
「キョーコ様は魔女の代理人さ。」と誇らしく語る青年。
「キョーコ様はやさしいんだよ。」「怪我だって簡単に治してくれるんだよ。」「キョーコ様は何でも知ってるんだよ。」口々に言う子供達。
あの少女は島の住人達から絶大な信頼を受けているらしい。
魔女の代理人としての地位なのか、彼女の資質故なのか。
その両方なのかもしれない。
彼女を知らない俺には判断つかないが、王太子にとって悪い状況ではない事は何となく感じ取れた。
彼女が仕える魔女なら、王太子も無事だろう。
そんな気さえしてきた。



席に着いていた俺のところにトレイを持った女将さんがやってきて湯気の立つ椀を一つ置いてくれた。

「もうすぐ出来るからね。これでも飲んで少し待っていておくれ。」

女将が出してくれたスープを口にし、そのどこか懐かしい味にホッとする。
やはり船の上より、陸の方がいい。
周りを見る余裕も出た。
安心感を得た俺はそこで気になる存在を見出だしていた。
視線窓の方へやれば、月が見える窓辺に椅子を寄せ、そこに座る女性がいる。
美しい女性だった。
感情のかけらも見せない表情のまま、ただ空に浮かぶ月を見ていた。

「あの女性、どうかなさったんですか?」
「彼女かい。もう10年以上は経つねぇ。浜辺で倒れていたんだよ。ケガはないようだったけど、記憶が、全くないんだよ。」
「記憶がない?」
「この島の人間ではないのは確かだね。小さな島だから島のもんならすぐにわかるよ。どこから来たのか、何が合ってここに辿り着いたかも分からないんだよ。」
「でも、この島は……。」
「そうだね、この島の周辺に人が住む様な島は一切ない。この島に住んでいるのは歴代の魔女の子孫言われている元々島にいた住民と、後はアンタ達みたいに王太子の船で大陸からやって来て、そのまま残った人間だけさ。」
「じゃあ、あの女性は……。」
「私達にもさっぱり分からないのさ。でも魔女が得体の知れないよそ者を受け入れたりはしないからね。……魔女が認めたなら私達は彼女を受け入れるよ。ただ身寄りがないから、うちで預かってるのさ。それとね、不思議な事があるんだよ。」
「不思議な事?」
「彼女は10年前と全く変わらない。あの髪……うちで引き取ってから一度も切っていない。」
「………。」
「魔女に記憶と時間を奪われてしまったのかもしれないね。」

10年?
それってまさか……。
俺の脳裏にある仮定が浮かんだ。
10年前と言えば……。

「そういや、あんた、ヤシロさんとか言ったね。」
「はい。」
「王太子の側近なんだろう。うちの旦那……元は大陸の人間だよ。あんたを見てあの人がちょっと寂しそうにしてたんだよ。」
「えっ?」
「宮廷の料理人だったんだよ。剣の腕前もそれなりによかったんで、ローリィ様と一緒にこの島に来たんだよ。」

ローリィ前王がこの島に来たのは10年も前。
10年前と言えば俺は17だった。
宮廷の書記官だった父に連れられて宮廷に出入するようになって3年目の事だ。
父はいずれは俺を宮廷での自分の地位を引き継がせたかったらしい。
下級貴族でしかないヤシロ家にとっては宮廷での地位の高さを維持する事が必須だったからだ。
剣はからっきしダメだった父。
だから俺も、それまで剣なんか護身用程度にしか習っていなかった。
剣で勝負を挑まれても負けっぱなしで、悔しい思いばかりしていた。
悔しくて、がむしゃらに剣を振るった。
そんな型も流儀もないものでは勝てるはずもなくて……。

「食え。坊主。」

奥から現れた武骨な主人がドンとテーブルの上に料理を置いた。

『食え。坊主。いくら頭が良くても体力がねぇんじゃつとまらねぇぞ。』

昔、誰かが言った。

『剣の勝負で負けた?しかたねぇだろ。相手はお前より年長だったんだ。加えてお前は最近剣術始めたばかりだろう。今日は負けたが今度はわからねぇぞ。俺も少しは剣が使える。練習の相手くらいしてやるよ。』

俺は強くなった。
一人で強くなったわけじゃない。
その人が俺に剣を教えてくれたんだ。
その人は……。

「せ…先生?」
「バカヤロー。先生じゃねぇ。俺はただの料理人だって昔から言ってるじゃねぇか!」

俺はどうして、この人を忘れていたんだろう。
俺を強くしてくれたのはこの人だ。
王太子の側近として今は仕えているが、それは剣術も含めた能力を買われたからだ。
頭脳は負けないと自負してきたが、剣術はと言えば昔は負けっぱなしだった。
あの頃のままだったら、今の俺はない。
そう、この人がいなければ今、俺はここにはいなかった。
それなのに俺はこの人を…。

「しかたねーだろ。これが魔女との契約だ。今、お前の記憶に俺がいるのもおそらく魔女の慈悲だ。島を出てしまえば、また俺の事なんざ忘れちまうんだろうな。」
「あんた。」
「お前も、そんな顔すんな。全部承知の上だ。」

魔女とはどんな人なんだろう。

「あの女性……もしかすると。」
「多分、お前の予想通りじゃねぇか?」
「フワ家の王子が連れていた女性……?」
「おそらくな。正直、俺もあまり覚えちゃいねえ。こんな女だった気がするってとこだ。魔女の怒りをかったんだろうぜ。愛人同伴の旅なんざ前代未聞だったからな。歳をとらねぇのも魔女の力だってんなら納得がいく。」
「先生。この島はなんなんですか?」
「先生じゃねぇって言ってんだろうが。……”魔女の島”。それ以上の事は誰も知らねぇよ。」

彼女がそうなら、フワの王子は?
彼もまた、どこかで生きているのかもしれない。








久々の『強く儚い者達』です。
次はキョコさんも蓮さんも出てきます。


よろしければまたいらして下さいね。



月華


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